厳罰主義が「いじめ防止対策」となるのか

7月29日、国民教育文化総合研究所(中央総研)が主催する「いじめ防止対策推進法」が学校にどのような影響をもたらすのか、というテーマで学習会が開催されました。2011年の大津市のいじめ自死事件をきっかけとして、法的対応の動きが強まる中で、国会会期末の6月21日にこの「いじめ防止対策推進法」が可決・成立しました。講演に立ったのは、教育総研の子ども権利検討委員会委員長で早稲田大学の喜多明人さん。まずは子どもの命や人権かかわる法律なのに、「子どもの権利」の視点が入っておらず、規範意識や厳罰化が目立っている。これで解決できるのかが疑問と指摘されました。

 137いじめ法具体的な問題点として指摘を受けたものを紹介します。
25条(校長・教員による懲戒)26条(出席停止制度の適切な運用)がある。これはかつて、07年に出された文科省通知のレベルを超えている。特に各自治体に設置が予定される「連絡協議会」の構成団体に各地の警察が明記され、法的な根拠を持って学校現場に警察が介入する恐れが出てきている。また、懲戒義務を受けて、高校の場合は、退学処分、停学処分等の法規的裁量を伴う行政処分に発展する可能性が懸念される。
一方、この法案検討時は前政権下であり、学校現場で生かせる可能性のある規定もある。いじめは深刻になれば学校だけでは解決できない場合が多い、そのためにも国連が指摘するように、子どもオンブズパーソンのような公的第三者機関を自治体に設置することが求められ、この法律の解釈上は可能性が追求できる(28条~32条)。また、財政上の措置(10条)にもふれている。この間、「いじめ根絶」が目標とされ、いじめがあることで学校評価が下がるとされてきたが、34条では「いじめはある」ことが前提にされ、「隠ぺい体質」(=保護者・市民の学校不信)の克服が謳われ、一定の評価できる。

いずれにしても、子どもストレス社会にメスを入れることなしに、道徳・規範意識と厳罰主義が横行したら、表面上の「いじめ減少」があっても、裏にまわってのいじめの陰湿化や残虐化が進行しないかが懸念されるのことです。
質疑の中で、今日の学校現場の超多忙化がいじめ問題の要因1つとの指摘がないし、条件整備の方向性が法律には見えないとの発言をしてきました。なお、研究部会サイトに中央総研作成による批判分析を後日掲載する予定です。

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