研究部会

 2017年度 県自治体における教育予算等調査結果

「子どもの貧困対策」関連自治体施策
 
           自治体奨学金制度、依然4市町未実施!
   就学援助受給率、ほぼ横ばい。中学校は高い値。 

1.経過と現状

(1)2017年6月、厚生労働省が発表した2016年「国民生活基礎調査」で日本の子ども(18歳未満)の相対的貧困率※は、13.9%(7人に1人)となった。調査は3年おきになされており、過去最低だった前回より、2.4ポイント下がり12年ぶりに改善したという。ただ経済協力開発機構(OECD)の直近のデータによれば、加盟36カ国の平均は11.4%であり、日本はこれを上回っている。

※「相対的貧困率」国民一人ひとりの所得を高い順に並べ、真ん中の所得の半分(貧困線)に満たない人の割合をいう。

(2)2013年6月19日、国会で「子どもの貧困対策の推進に関する法律」(以下、貧困対策法)が全会一致で可決成立した。法の目的を「子どもの将来が、生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子どもの貧困対策に関し、基本理念を定め、対策を総合的に推進すること」としている。第8条では、大綱として、教育の支援、生活の支援、保護者への就労支援、経済的支援などについて定めている。この対策法は2014年1月17日に施行され、国は今後子どもの貧困率の改善や支援に関する大綱を作成、それに基づき、都道府県は子どもの貧困対策計画をつくることになるが、これは努力義務にとどまっている。

(3)授業料以外でも私費負担が多額になっている。一般的な返済を必要とする貸与型奨学金は04年度に制度改変し、独立行政法人「日本学生支援機構」に所管が移行した。機構の奨学金は無利子と有利子の2種類で、貸与された奨学金の返済は卒業して6ヶ月後から始まり、就職の可否に関わらず、3ヶ月滞納するとブラックリストに載せられる。2012年度では33万人が返済延滞者とされ、返還金の回収強化が図られている。
 そうした中、文科省は2017年度から返済の必要がない給付型奨学金の支給を始めた。当初は2650人、2018年度には本格スタートをさせるとして2万人程度を予定しているという。対象は大学等の進学を希望し、住民税が非課税となっている世帯が対象で月2~3万円程度。ただ必要としている全ての学生には行き渡らず、給付額も大学に通うには十分とはいえないと指摘もあり、今後の課題となっている。

(4)就学援助は、生活保護世帯と、それに準じて生活が困窮している「準要保護」の子どもが対象となっており、生活保護世帯は国が補助、準要保護は市区町村が平均年7万円相当を補助している。2013年度では小中学生全体の15.4%を占めているが、国が13~15年に生活保護基準を下げたことで対象者8割に影響するとされており、自治体が定める基準(概ね生活保護基準の1,3倍)の見直しが迫られている。しかし、「子どもの貧困率」の増加と共に財政状況の厳しい自治体負担が大きくなる傾向もあり、自治体間にバラツキが出ていると言われている。貧困対策法の趣旨を生かすには、自治体に運用を任せるのではなく、補助金の確保、所得制限の緩和、援助費目や金額の拡充がより一層必要となる。

2.県内自治体の比較分析と課題

いしかわ教育総研は子ども支援施策について、今年度も県内のすべて自治体に「就学援助制度」「奨学金制度」と「学習支援施策」について調査依頼した。

(1)「就学援助」については、経年経過を見ると、概ねどの自治体も受給割合の増加傾向が続いてきたものの、ここ数年は全体的には下げ止まり傾向となっている(県平均は小学校で12.2%、中学校で14.4%)。2017年度は県内受給者の半数を占める金沢市が数値を下げていることがその原因と考えられる。今年度の結果を個別に見ると、前年度より上昇しているのは小学校10/19市町、中学校10/19市町となっており、全児童生徒数に対し10%を超える自治体は、小学校で5市1町、中学校で9市2町となっており、小松市、羽咋市が初めて10%超となるなど、中学校で増加している。この結果は生活保護基準と連動していることから、自治体の支給基準(生活保護基準の1.3倍)の見直しがなくても、支給対象者に影響していないか、実態把握の必要がある。
 今年度も金沢市が昨年度より低下したものの、小中それぞれ、15.3%、18.8%と依然高い受給率を示し、白山市では小中それぞれ18.0%、17.5%と上昇傾向が大きくなってきている。これは「子どもの貧困」率との相関関係は否定できないが、制度に対する保護者への周知を丁寧に行っていることも、影響していることも考えられる。本年度は新たに周知の手立ても調査しており、受給率の高い金沢市では「新入学児童検診時に、制度のお知らせ配布。毎年度はじめに、学校から全児童生徒へ制度のお知らせと申請書を配布。ホームページや、新聞広報に掲載」とあり、白山市でも「4月に学校を通して全児童生徒にお知らせと申請書を配布、市のHPや広報4月号掲載」とのこと。また、町で受給率の高い能登町では「各学校から在学している全児童生徒の世帯へ文書で案内している」とあり、いずれも丁寧な周知方法がとられている。

(2)「奨学金制度」については、19市町中、何らかの制度をもつ自治体は15、その内、9自治体が「給付型」の制度を取っているが、応募者数と採用数に自治体によっては乖離が見られることから、審査基準が制度を必要とする子どもたちへの妨げになっていないか検証する必要がある。この内、創設4年目の白山市は高校生を対象に給付型の制度をとっているものの、希望者に対応した支援には不十分と指摘されており、七尾市は予算総額の中で支援を行うことから、毎年給付金額が変動している。なお、15年度制度を始めた中能登町には最初の給付対象者があった。一方、依然4自治体が未実施であり、石政連議員等を通じて制度の設立や貸与型のみの自治体には給付型への変更を求めていく必要がある。

PDF 2017年度 就学援助受給状況

PDF  2017 自治体奨学金制度

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2018年度 フィールドワーク・公開研究講座

「鶴彬の願いに学ぶ」かほく市高松 浄専寺

 6月23日、平和教育部会が主催する公開研究講座をかほく市高松「浄専寺」で開催しました。会場には河北支部中心とした組合員に教育総研関係者、地元市民を加え、40名が参加しました。講師には同寺の前住職で「鶴彬を顕彰する会」の幹事も務めている平野道雄さんにお願いし、当地出身の川柳作家・鶴彬(本名・喜多一二、1909~1938)の生涯とその願いについて講演いただきました。
 鶴彬は29年の短い生涯で1000余りの反戦川柳を残し、治安維持法で2回検挙され、最後は東京の野万署に収監のまま獄死しています。平野さんは境内に句碑「胎内の動きを知るころ骨(こつ)がつき」を建立したのは、戦時下において教団(大谷派)が過ちを犯した歴史があり、自由と平等を説いた親鸞の教えとは違っていた反省からと紹介されました。鶴彬は17歳で大阪の町工場で働くが、その時に労働者・民衆が非人間的な扱いをうける現実に遭遇し、国策に翻弄された民衆の悲しみを川柳として「吐く」ようになったとのことです。
 平野さんは今の時代、戦争を知らない大人が多くなり、政治ベクトルが右に動いている。戦争体験が忘れられそうな時代だからこそ、歴史を振り返ることが大切になっている。とかくお任せ民主主義といわれる中で、改めて平和の敵は戦争だけでなく、無関心も平和の敵だと指摘されました。顕彰会ではかほく市内の小学校で埋葬地岩手盛岡の研究者を招いた特別授業を続けていることも紹介されました。

 講演会に先立ち、午前中は20名の参加で、鶴彬の句碑を巡るフィールドワークを実施しました。顕彰会メンバーの案内で、生家跡(喜多家)、高松歴史公園、そして鶴彬資料室、ここでは鶴彬の波乱の人生をパネル展示や2009年制作のドキュメンタリー映画「鶴彬 こころの軌跡」関連資料などが会員の手作りで展示されています。
 今年は没後80周年にあたります。「非暴力と平等の精神」を川柳で貫いた詩人の存在を新ためて学習することの意義を確認できた公開講座になりました。

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2018年度 小松市でF.W.と公開研究講座

 小松の町は梯川が作った

 8月17日、環境教育部会主催のフィールドワーク(FW)と公開研究講座が小松市を会場に開催されました。この夏は連日の猛暑日が続いていましたが、この日は一転して涼しさを感ずる日となり、午前中のFWは青木部会長の案内で28名が参加しました。
 まずは小松の市街地形成に深く関わる梯川の河川改修事業の現場である小松天満宮へ。現地には国交省からも説明に来ていただきました。梯川は勾配が少なく、この付近は河川幅が狭くなっており、たびたび洪水の被害に見舞われてきたところです。昨年完成した事業は河川に隣接するこの国指定文化財を移転させることなく、輪中の形で分水路を作ったことに特徴があります。文化財の保全か事業優先かの選択をしたことになります。青木部会長曰く、高度成長期ならこの選択はしなかっただろうとのことです。
 小松市街地は旧小松城を中心に形成されています。かつて梯川はこの付近から90度進路を変えており、その2辺を活用、海に浮かぶ島のように水路を整備した「水城」となっていました。FWでは広大だった敷地とかつての堀跡が今は住宅地となっている一帯を歩き、殿町、古城町、丸内町、浮城町、芦田町など町名や葭島神社、芦城公園の名からも当時の環境が想像できるようでした。

 午後は小松市文化会館に会場を移し、公開講座を開催、小松支部を中心とした組合員に教育総研関係者を加え、50名が参加しました。
 まずは昨年度の全国教研に参加した、河北支部・村上直哉さんから「給食0へのこだわり~食を通して健全育成をめざす~」とのテーマで報告を頂きました。村上さんは、子どもたちの食生活の乱れや健康問題が深刻化する中で学校給食や食育の果たす役割の大きさを痛感してきた。その中で教職員の理解と協力を得て、全校的に食べることの意義を伝え、配膳まで工夫して、結果的に残食0を実現しているとのことでした。
 青木部会長からは午前中のFWを受ける形で、「小松の街ってこんなところ~小松の環境と防災を考える~」とのテーマで講演を頂きました。冒頭で大川小の控訴審判決を取り上げ、学校には独自に学校・校区の地理的環境を独自に調査・分析する責任が求められ、行政のハザードマップを上回る危険性も認知すべきとされている。この7月の西日本豪雨、倉敷市真備町が大きな被害を受けたが、想定されたハザードマップの範囲内だった。しかし、被害の拡大は地理的環境の理解の周知が進んでいなかったからと言われる。小松市もよく似た地形でハザードマップにはほぼ市街地全域に洪水被害想定が示されている。旧小松城を中心とした当時の町並みは浸水想定地域を避けて微高地の砂丘に形成されていた。現在はかつての低湿地であり、水田として利用されていた所が住宅地として開発されている。潜在的に水害リスクが高いことを理解することが必要である。子どもたちにも地域の環境理解を通した防災対策・災害対応が必要とまとめられました。

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2018年度 県教育予算説明会

長時間勤務改善、実感とまだまだかい離

 5月28日、事務局・研究員10名の参加で、県議会会議室を会場に、2018年度の県教育予算説明会を開催、県教委各課の参加で、新規事業を中心に説明を受けました。今年度は主要施策として、初めて教職員の長時間勤務が取り上げられ、「教職員が心身の健康を保ちながら教材研究・授業準備や子どもたちと向き合う時間を十分確保するため、教職員の多忙化改善に向けた取り組みを進める」とした課題が挙げられています。

 参加者からは、まずこの長時間労働改善にかかわる施策に質疑が集中しました。 ① 具体的には、モデル校を設置(小中高各3校)して業務改善の実践・検証する、部活動指導員配置48人・授業には携わらないスクールサポート30人をモデル配置する、としています。参加者からは、今年度は4月当初から講師不足で欠員からスタートした所もあると聞く。これは教育現場の状況にしり込みしているのではないか。またスタッフが配置されていない所の状況は変わっていない、県教委は3年後に超勤改善目標を設定しているが、達成できるとは思えない。現場では管理職が帰宅を促すようになっているものの、業務が減っていない中では持ち帰り仕事が増えるだけだ。との実態が明らかにされました。 ② 県教委は、実態として部活動指導が大きな要因となり中学校が長時間勤務となっている。また教頭や主幹などの中間管理職、若い世代への負担増などが特徴的との実態を明らかにしました。県教委として昨年度研修の15%削減を行い、さらに今年度初任研は3日、2年研は1.5日削減した。学校訪問の回数削減、研究推進校はほとんどなくした。現場には会議や学校行事の見直し、研究発表の紀要の簡略化や採点業務の時間確保なども求めているとしました。 ③ 今年も教育現場からは業務改善の実感があまり感じられないとの声が教育総研にも届いています。参加者からは学校現場に業務軽減の施策が伝わっていない、学校任せではなく、県教委が直接指導すべきではないか、学校閉庁日の対応も「勤務を要しない日」にならないのか、との意見も出されました。まだまだ建前と実態とのかい離、県教委の「本気度」に疑義がだされました。

 毎年指摘をしている全国学力調査に加え、県が進める基礎学力調査や評価問題の実施について、現場ではこの対策に依然時間が取られている。子どもにもネガティブな影響が出ており、教育という名に値しないと指摘が出されました。また、福井県では県議会が事態の見直しを提言している。石川県でも対応すべきだとの意見に、「評価問題」は2月実施分についてはウエブに掲載することにし、市町に実施の判断をまかせているが、12月分は従来通り(結果の報告を求めることも)実施したいとのこと。長時間労働と学力調査の関連は認めたくないとの姿勢は依然変わっていません。

 その他、新学習指導要領、特に英語教育対策として、3.4年生の英語活動、5.6年生の英語教育、中学校のオールイングリッシュによる授業を小中各9校のモデル校で実践研究するとしています。また、小学校3.4年生には選択制としながらも少人数学校を認め、依然5.6年生は習熟度別学級のみとしていることには、より効果的との立場を変えず、この項には単独予算は今年も0で、県教委として実施主体は国との説明を変えませんでした。

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