教育政策

2019年度 県自治体における教育予算等の調査結果

「子どもの貧困対策」関連自治体施策

        「奨学金制度」何らかの制度を持つ自治体14/19、内9が給付型
  「就学援助」 県平均小学校11.9%、中学校13.9%

1.経過と現状

(1)2017年6月、厚生労働省が発表した2016年「国民生活基礎調査」で日本の子ども(18歳未満)の相対的貧困率※は、13.9%(7人に1人)となった。調査は3年おきになされており、過去最低だった前回より、2.4ポイント下がり12年ぶりに改善したという。ただ経済協力開発機構(OECD)の直近のデータによれば、加盟36カ国の平均は11.4%であり、日本は加盟国のうち、データのある34カ国中20位と依然低位にある。

※「相対的貧困率」国民一人ひとりの所得を高い順に並べ、真ん中の所得の半分(貧困線)に満たない人の割合をいう。

(2)2014年1月17日に施行された「子どもの貧困対策の推進に関する法律」(以下、貧困対策法)。法の目的は「子どもの将来が、生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子どもの貧困対策に関し、基本理念を定め、対策を総合的に推進すること」とされている。
 この貧困対策法は5年をめどに見直すことになっており、2019年9月7日に改正案が施行された。この改正案では、貧困状況の子どもや保護者の意見を反映させることを明記、ひとり親世帯の貧困率と生活保護世帯の子どもの大学進学率の2つの指標と改善策を政府の対抗に記すよう求めた。加えて、所得増加につながるよう、保護者への就労支援を進めることも盛り込んでいる。

(3)授業料以外でも私費負担が多額になっている。一般的な返済を必要とする貸与型奨学金は04年度に制度改変し、独立行政法人「日本学生支援機構」に所管が移行した。機構の奨学金は無利子と有利子の2種類で、貸与された奨学金の返済は卒業して6ヶ月後から始まり、20年で返還となっており、就職の可否に関わらず、3ヶ月滞納するとブラックリストに載せられる。2017年度の総貸与残高は9兆4千億円、返還者は426万人、3ヶ月以上の延滞者は16万人、卒業時の平均貸与額は無利子で240万円、有利子で340万円となっている。
   そうした中、文科省は2017年度から返済の必要がない給付型奨学金の支給を始めた。対象は大学等の進学を希望し、住民税が非課税となっている世帯が対象で自宅通学月2~3万円程度、自宅外で6~7万円となっている。初年度の2018年度は約18,000人程度、2019年度で21,000人程度が受給している。ただ必要としている全ての学生には行き渡らず、給付額も大学に通うには十分とはいえないと指摘もあり、引き続き課題となっている。

(4)就学援助は、生活保護世帯と、それに準じて生活が困窮している「準要保護」の子どもが対象となっており、生活保護世帯は国が補助、準要保護は市区町村が平均年7万円相当を補助している。2015年度では小中学生全体の15.2%を占めており、2010年度以降、15%以上の高止まりになっている。国が13年度から3年間で生活保護費の内、生活扶助分を6.5%切り下げて以来、2018年度10月からさらに生活扶助を中心に(最大5.0%減)引き下げている。基準を下げたことで就学援助対象者にも影響することとなり、自治体が定める基準(概ね生活保護基準の1.3倍)の見直しが迫られている。こうした「子どもの貧困率」の増加は財政状況の厳しい自治体負担が大きくなる傾向もあり、自治体間にバラツキが出ていると言われている。貧困対策法の趣旨を生かすには、自治体に運用を任せるのではなく、補助金の確保、所得制限の緩和、援助費目や金額の拡充がより一層必要となる。

(5)文科省が10月に発表した「不登校」(年間30日以上欠席)は、小中学校で164,528人と前年度比で20,497人増加、6年連続で増加している。教育総研では、県内状況を把握できないかと、新たに実態報告をお願いしたが、多くの自治体から「統計法」を根拠に公表できないとされ、集計は叶わなかった。

2.県内自治体の比較分析と課題

いしかわ教育総研は子ども支援施策について、今年度も県内のすべて自治体に「就学援助制度」「奨学金制度」について調査を依頼した。

(1)「奨学金制度」については、19市町中、何らかの制度をもつ自治体は14、昨年度より宝達志水町が制度を廃止している。その内、9自治体が「給付型」の制度を取っているが、応募者数と採用数に自治体によっては乖離が見られることから、審査基準が制度を必要とする子どもたちへの妨げになっていないか検証する必要がある。
 毎回指摘している、創設6年目の白山市は高校生を対象に給付型の制度を続けているものの、希望者の増加に関わらず支給対象を限定していることが問題視されている。七尾市は予算総額の中で支援を行うことから、毎年給付金額が変動している。一方、金沢市は月10,000円を129名(応募143名)に支援、小松市、かほく市は減額、輪島市は貸与型などの課題はあるものの、ほぼ応募者全員に支給している。また、依然5自治体が未実施であり、石政連議員等を通じて制度の設立や貸与型のみの自治体には給付型への変更を求めていく必要がある。

(2)「就学援助」については、経年経過を見ると、概ねどの自治体も受給割合の増加傾向が続いてきたものの、県平均は小学校で11.9%、中学校で13.9%と前年度よりやや減少している。2019年度は白山市や輪島市で高い数値が見られるものの、県内受給者の半数を占める金沢市が数値を下げていることがその原因と考えられる。今年度の結果を個別に見ると、前年度より上昇しているのは小学校10/19市町(前年比-2)、中学校7/19市町(-1)となっており、全児童生徒数に対し10%を超える自治体は、小学校4市1町(-1)、中学校8市2町(-1)となっており、前年10%越えの野々市市小学校が今年度10%を下回り、珠洲市中学校が初めて10%台になっている。
    今年度も金沢市が前年度よりさらに低下したものの、小中それぞれ、14.2%、17.2%と依然高い数値となっている。輪島市では小中それぞれ14.9%、20.7%と県内初めて20%台の数値が報告されている。これは「子どもの貧困」率との相関関係は否定できないが、制度に対する保護者への周知を丁寧に行っていることも、影響していることも考えられる。
 昨年度から新たに周知の手立ても調査しており、輪島市は「福祉課と連携し、児童扶養手当の申請・現況届提出時に就学援助制度の案内文書を同封している」、金沢市は「新入学児童検診時に、制度のお知らせ配布。毎年度はじめに、学校から全児童生徒へ制度のお知らせと申請書を配布。ホームページや、新聞広報に掲載」とあり、申請書を全員配布していることに注目される。ちなみに、文科省調査(2016年度)によれば、「全児童生徒もしくは保護者に申請書を配布」している学校は全体の17.4%に止まっており、こうした県内でのとり組みは評価される。

     2019 市町奨学金制度 PDF

     2019 市町就学援助比較 PDF

 

2018年度決算における学校図書館図書費、自治体比較

  「蔵書達成率」小中とも100%は7市6町
  「措置率」国が基準見直し2年、達成1市2町のみ

 1.経過

(1)学校図書館整備がまだ不十分として、2017年度から新たに「学校図書館図書整備5カ年計画」(~2021年度)が始まり、蔵書整備で単年度約220億円、新聞配備で30億円、加えて学校図書館担当職員(司書、常勤または非常勤、教員やボランティア含まない)配置に約220億円(週30時間勤務で1.5校に1名配置が可能)が、いわゆる「一般財源」として措置されている。
 蔵書達成率は文科省が学校図書館に整備すべき蔵書の標準として、1993年3月、自治体の学級数ごとの計算式を定めている。これによれば、小学校18学級の場合、10,360冊、中学校15学級の場合、10,720冊となる。なお、文科省によれば、学校図書館図書達成率(2018年度集計)は小学校で66.4%、中学校で55.3%、新聞の配備は小学校41.1%、中学校37.7%となっている。
 本調査は2019年度に行っているが、2018年度に確定した決算データを各自治体にお願いし、集計と分析を行っている。

(2)質問項目にある基準財政需要額については、国の地方交付税教育費の積算基礎、2018年度の学校図書館図書は、小学校では標準施設(学級数18)1校あたり、778,000円となっており、1学級あたりでは43,222円となる。したがって、当該市町における交付税措置額(A)は、次の算式で求められる。

  A=778千円/18学級×当該市町の学級数×補正係数

また、中学校では標準学級数は15,1校あたり1,063,000円となり、1学級では70,867円となる。補正係数とは自治体の自然的・社会的状況の違いから行政経費の差を反映させるために、割り増しや割落としを行う数値である。

(3)児童生徒1人あたりの図書費については、基準額を学級定数40人で割り算すれば、小学校で約1,081円、中学校は1,742円となるが、平均的な学級人数はさらに少ないことから、教育総研では当初から小学校1200円、中学校2000円を目安としてきた。近年、学級人数が少ない過疎地域の学校では算定基準が学級数であることから、この数値は大きくなることとなり、予算措置も充実してきたことから、この数値を超える自治体が多くなっている。

 

2.自治体比較分析

(1)文科省基準による図書館蔵書達成率(2019.5.1現在)について、100%を超えた自治体は小学校では10市8町で達成(2017年度10市8町、2016年度11市8町全て達成)、中学校では7市6町(2016年度7市7町、2016年度8市5町)と概ね達成されている。また、小中とも100%を達成しているのは、加賀市、小松市、白山市、野々市市、金沢市、かほく市、羽咋市、川北町、内灘町、宝達志水町、志賀町、中能登町の7市6町(2017年度8市6町、2016年度7市5町)となっている。しかし、文科省も古い図書が保有されている状況を指摘しており、学校図書館司書配置が充実することで、廃棄が適正に行われれば、この達成率に影響する自治体が出てくることも考慮する必要がある。

(2)基準財政需要額に対する決算額割合の考え方(措置率とも表記される)は、国が基準を示して交付税措置をするとしている以上、100%を達成することが自治体に求められることになる。しかし、自治体にとっては、多種多様な項目に対応した交付税措置がなされているとの認識はなく、自治体の判断で予算化される傾向がある。2017年度からこの学校図書館図書費(蔵書・新聞)の基準額は前年度より約30%増となっており、自治体では十分な対応がなされなかった。2018年度決算でも同様の傾向が見られ、小中とも100%を達成した自治体は、珠洲市、川北町、中能登町の1市2町に止まり(2017年度1市1町、2016年度5市2町)となり、さらに決算額で小中とも60%以下に止まったのは3市2町あり、近年見られない結果となっており、課題を残している。

(3)1人あたりの図書費(2018年度決算基準)は、予算配当の充実した自治体や小規模校の多い自治体で、教育総研が設定した基準を満たしている。小中とも基準を達成しているのは、加賀市、白山市、珠洲市、川北町、志賀町、中能登町、穴水町の3市4町(2017年度3市3町、2016年度3市3町)と自治体の入れ替わりはあったものの、前年度と同様の結果となった。なお、小学校では7市7町で達成が見られるものの、中学校では3市4町に止まり、さらなる予算配当が望まれる。また、2017年度から文科省の基準額が増加したことから、全体的な数値の下降が見られ、当面この基準は据え置くものとする。
 なお、措置率と蔵書達成割合については、相関図で表記している。

  2018決算   市町図書館図書費調査PDF

  2018決算 市町図書費相関図PDF

 

学校図書館司書の配置比較

  全市町配置も88.1%が非正規雇用
  専任、フルタイムは3市3町のみ

1.経過

(1)1996年6月に学校図書館法の一部改正がなされ、2003年4月から12学級以上すべての公立学校に司書教諭が発令されることとなった。しかし、同法2条2項「司書教諭は教諭を持って充てる」となっており、いわゆる「充て」司書教諭が発令されている。そのため、学校では学級担任等の通常勤務との兼務となり、図書館業務には手が回らない実態は解消されていない。

(2)2014年6月に再び、「学校図書館法の一部を改正する法律」が成立(2015.4施行)し、学校図書館司書が法的に位置づけられた。当時、全国平均で半数の学校(文科省調査:2012年度、小学校47.8%、中学校48.2%)にしか司書配置がなされていない中で、この法改正は学校現場の要請が結実したものと言える。
 文科省は「第5次学校図書館図書整備5カ年計画」(2017~2021)を進めている。この中で学校司書の配置は週あたり30時間の職員をおおむね1.5校に1名程度配置可能な予算措置として、単年度で220億円を措置している。ちなみに2016年度の文科省調査(2年ごとの調査)によれば、司書の配置学校は小学校59.2%、中学校58.2 %となっており、5年間で約10%増加している。(2018年度は未公表)しかし、この予算は司書の全校配置にはまだまだ不十分な予算であり、結果的に自治体間の格差を生み出すこととなっている。

(3)2016年、文科省「これからの学校図書館の整備充実について(報告)」では、「教育委員会は、学校司書として自ら雇用する職員を置くよう努める必要がある。学校教職員の一員として、学校司書が職員会議や校内研修等に参加するなど、学校の教育活動全体の状況を把握したうえで職務に当たることも有効である。」としている。しかし、2017文科省調査によれば、常勤(専任・フルタイム勤務)配置の学校は18.7%に止まっている。

2.今年度の状況と課題

(1)教育総研が調査を始めて18年となり、2014年度にそれまで配置のなかった1つの自治体がその年の10月に配置を行い、県内すべての市町で配置が実現した。この間、教育総研のとりくみが自治体議会でも取り上げられ、マスコミ報道もされてきたことの成果と自負している。  2019年度は全県で193人(正規23人、非正規170人)と前年度より3人減少した。これは中能登町が県内で初めて民間委託(4人)としたことが主な要因であり、1校1名配置のいわゆる専任司書配置は小松市、能美市、白山市、野々市市、志賀町、中能登町(民間)に新たに川北町が加わり、4市3町となった。

(2)日教組学校図書館職員対策委員会は、2018年8月から9月にかけて「学校司書等に関する実態調査」を小中高対象に行い、全都道府県から抽出で2185人から回答を得ている。それによれば、学校司書が「配置されていない」は小学校で23.2%、中学校で26.6%と1/4程度を占めている。また、「配置されている」学校のうち、フルタイム勤務は小学校で18.5%、中学校で18.4%といずれも2割弱に止まり、18学級以上の大規模校でも2割強に過ぎないことが明らかになっている。
 調査に寄せられた声として、司書が配置されていることで「教員の時間的・精神的な余裕のない現場で、不特定多数の子どもたちと関わることができる学校司書は、なかなか居場所を見つけることができない子どもたちにとって欠かすことができない存在になっている。」(小学校)「学校司書の配置で本の貸し出し、著しく増加した。授業活用では多種多様な資料が用意され、生徒の学びが深まり、広がりつつある。」(中学校)などのメリットや司書不在に伴う課題も多く出されている。(2019年度は同様の調査はなし)

(3)司書の雇用状況も継続して調査しているが、依然、大多数(88.1%)が非正規職員で短時間勤務、有期雇用であり、昨年同様3市4町が雇用の際に資格を条件としていない。このことが、採用条件に影響していないか懸念される。
 正規職員が雇用されているのは、昨年同様、2市3町、能美市、白山市、川北町、津幡町、宝達志水町となっている。今年度も白山市は半数超の正規雇用を確保し、非正規職員でも専任・フルタイム勤務となっており、特筆される。しかし、正規、非正規が混在する自治体では、同一労働でありながら、依然待遇に格差が生ずる課題が残されている。中能登町の民間委託については、採用条件に免許を課しているとのことだが、雇用条件については教育委員会が把握しないとのことで、その是非は課題となる。

(4)勤務時間が1日7時間以上、週35時間以上の「フルタイム勤務」をとっているのは7市3町となっている。その中で「専任」としているのは、小松市、能美市、白山市、野々市市、川北町、志賀町、中能登町(民間)の3市3町となっており、白山市では学校職員の一員として職員会議に参加しているとの報告も受けている(該当自治体未調査)。
 引き続き国には自治体間格差を生じさせないよう適切な予算配当を求め、自治体には教育総研が掲げる「専任配置」「フルタイム勤務」「正規職員化」の実現を求めていく必要がある。

  2019 市町図書館司書配置状況PDF

 

 

2019年度「公正な教科書採択を求める市民集会」

「闇の教育」から「光の教育」へ

 

 11月30日、教育総研が主催する「公正な教科書採択を求める市民集会」が白山市市民交流センターを会場に、開催しました。この集会、県内3市で、育鵬社教科書の採択がなされたことを契機に2016年度から開催を続けています。当初の3年計画が一段落し、今年度は形を変えて、教科書問題を演劇で表現する企画を進めてきました。

 第1部は「リーディング劇」、演目は「テキスト闇教育」。出演をお願いしたのは大阪を中心に活動する脚本家・くるみざわしんさん(光の領地)と、この演目で共演されている演出家・増田雄さん(モンゴルズシアターカンパニー)、そして6名の女性劇団員の皆さんです。ストーリーは歴史・公民・道徳の教科書会社に「教育復興会議」の幹部が乗り込んできて、戦争を美化するような資料や、日本国憲法を敵視し、基本的人権を制限する掲載を強制するというもので、投影された映像には育鵬社教科書に掲載されたものも使われました。また、道徳では集団や権威に従順であることを求めるものとして、小学校道徳教科書に掲載され人気教材とされる「星野君の二塁打」や形式にこだわる「おじぎの仕方」も採りあげられ、笑っているだけでは済まされない「意図」を的確に、迫真の表現で演じられました。

 第2部はトークセッション「満州の悲劇から現在の教科書問題を考える」です。冒頭に小林信介さん(金沢大学)から、「大陸侵略と開拓移民」との、問題提起をいただき、満州開拓移民はどうして行われたのか、石川県は全国でも上位の送出県であり、白山郷開拓団の悲劇も紹介しながら、教師が移民への大きな役割を果たしてきたと説明されました。パネラーとして登壇した「くるみざわ」さんは、祖父が長野県で村長として多くの開拓移民を送り出したことを明らかにされ、「闇教育」は従順を美徳とし、権力への従順を求める教育だ、権力側はどういうことを考え、どういう手口を使ってくるのか、「学び」が極めて大切になる。特に参加した現職教職員に対しては、同じ教材を使っても、先生が何を語るのかが大切であり、ぜひ「光の教育」をしてほしいとまとめられました。

 会場には現職教職員に県内で教科書問題にとり組む市民団体、退職教職員や勤労協からも参加者があり、130名を越えました。「育鵬社教科書の問題は聞いてはいたが、もう1度読んでみたい」「教育の怖さや大切さをつくづく感じた」「自分は間違っていないか、との思いを常に持っていないと教員は勤まらないと思った」「教科書一つで学ぶ子どもたちの心が教科書の中身になっていく、このことが改めて分かった」など、多くの意見が寄せられました。

2018年度 県自治体における教育予算等の調査結果

「子どもの貧困対策」関連自治体施策

  「奨学金制度」何らかの制度を持つ自治体14/19、内9が給付型
  「就学援助」 県平均小学校12.3%、中学校14.4%

1.経過と現状

(1)2017年6月、厚生労働省が発表した2016年「国民生活基礎調査」で日本の子ども(18歳未満)の相対的貧困率※は、13.9%(7人に1人)となった。調査は3年おきになされており、過去最低だった前回より、2.4ポイント下がり12年ぶりに改善したという。ただ経済協力開発機構(OECD)の直近のデータによれば、加盟36カ国の平均は11.4%であり、日本は加盟国のうち、データのある34カ国中20位と依然低位にある。

※「相対的貧困率」国民一人ひとりの所得を高い順に並べ、真ん中の所得の半分(貧困線)に満たない人の割合をいう。

(2)2013年6月19日、国会で「子どもの貧困対策の推進に関する法律」(以下、貧困対策法)が全会一致で可決成立した。法の目的を「子どもの将来が、生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子どもの貧困対策に関し、基本理念を定め、対策を総合的に推進すること」としている。

第8条では、大綱として、教育の支援、生活の支援、保護者への就労支援、経済的支援などについて定めている。この対策法は2014年1月17日に施行され、国は今後子どもの貧困率の改善や支援に関する大綱を作成、それに基づき、都道府県は子どもの貧困対策計画をつくることになるが、これは努力義務にとどまっている。

この貧困対策法は5年をめどに見直すことになっており、教育支援では一定の成果が見られるものの、経済支援策は不十分とされており、現在国は見直し着手している。

(3)授業料以外でも私費負担が多額になっている。一般的な返済を必要とする貸与型奨学金は04年度に制度改変し、独立行政法人「日本学生支援機構」に所管が移行した。機構の奨学金は無利子と有利子の2種類で、貸与された奨学金の返済は卒業して6ヶ月後から始まり、20年で返還となっており、就職の可否に関わらず、3ヶ月滞納するとブラックリストに載せられる。2017年度の総貸与残高は9兆4千億円、返還者は426万人、3ヶ月以上の延滞者は16万人、卒業時の平均貸与額は無利子で240万円、有利子で340万円となっている。

 そうした中、文科省は2017年度から返済の必要がない給付型奨学金の支給を始めた。

対象は大学等の進学を希望し、住民税が非課税となっている世帯が対象で月2~3万円程度。2018年度は約18,000人程度が受給されている。ただ必要としている全ての学生には行き渡らず、給付額も大学に通うには十分とはいえないと指摘もあり、今後の課題となっている。

(4)就学援助は、生活保護世帯と、それに準じて生活が困窮している「準要保護」の子どもが対象となっており、生活保護世帯は国が補助、準要保護は市区町村が平均年7万円相当を補助している。2015年度では小中学生全体の15.2%を占めており、2010年度以降、15%以上の高止まりになっている。国が13年度から3年間で生活保護費の内、生活費分を6.5%切り下げ、本年度からさらに1.8%を引き下げようとしている。基準を下げたことで対象者4割に影響するとされており、自治体が定める基準(概ね生活保護基準の1.3倍)の見直しが迫られている。こうした「子どもの貧困率」の増加は財政状況の厳しい自治体負担が大きくなる傾向もあり、自治体間にバラツキが出ていると言われている。貧困対策法の趣旨を生かすには、自治体に運用を任せるのではなく、補助金の確保、所得制限の緩和、援助費目や金額の拡充がより一層必要となる。

2.県内自治体の比較分析と課題

いしかわ教育総研は子ども支援施策について、今年度も県内のすべて自治体に「就学援助制度」「奨学金制度」と「学習支援施策」について調査を依頼した。

(1)「奨学金制度」については、19市町中、何らかの制度をもつ自治体は14、今回、宝達志水町が制度を廃止している。その内、9自治体が「給付型」の制度を取っているが、応募者数と採用数に自治体によっては乖離が見られることから、審査基準が制度を必要とする子どもたちへの妨げになっていないか検証する必要がある。毎回指摘している、創設5年目の白山市は高校生を対象に給付型の制度を続けているものの、希望者の増加に対応した支援には不十分と指摘されており、七尾市は予算総額の中で支援を行うことから、毎年給付金額が変動している。一方、金沢市は月10,000円を100名(応募111名)に支援、小松市、かほく市、内灘町はほぼ応募者全員に支給している。また、依然5自治体が未実施であり、石政連議員等を通じて制度の設立や貸与型のみの自治体には給付型への変更を求めていく必要がある。

(2)「就学援助」については、経年経過を見ると、概ねどの自治体も受給割合の増加傾向が続いてきたものの、ここ数年は高止まり傾向となっている。県平均は小学校で12.3%、中学校で14.4%と前年度とほぼ同じ数値となっている。2018年度は白山市や輪島市で高い数値が見られるものの、県内受給者の半数を占める金沢市が数値を下げていることがその原因と考えられる。今年度の結果を個別に見ると、前年度より上昇しているのは小学校12/19市町(前年比+2)、中学校8/19市町(-2)となっており、全児童生徒数に対し10%を超える自治体は、小学校5市1町(-1)、中学校9市2町(-2)となっており、前年10%越えの小学校・能登町、中学校・羽咋市、七尾市が今年度10%を下回っている。

今年度も金沢市が前年度よりさらに低下したものの、小中それぞれ、15.0%、18.1%と依然高い受給率を示し、白山市では小中それぞれ18.2%、18.1%と上昇傾向が続き、輪島市でも小中それぞれ14.6%、19.6%と高い数値が報告されている。これは「子どもの貧困」率との相関関係は否定できないが、制度に対する保護者への周知を丁寧に行っていることも、影響していることも考えられる。本年度は新たに周知の手立ても調査しており、受給率の高い自治体では「新入学児童検診時に、制度のお知らせ配布。毎年度はじめに、学校から全児童生徒へ制度のお知らせと申請書を配布。ホームページや、新聞広報に掲載」とあり、とくに申請書を全員配布していることに注目される。ちなみに、文科省調査(2016年度)によれば、「全児童生徒もしくは保護者に申請書を配布」している学校は全体の17.4%に止まっており、こうした県内でのとり組みは特筆される。

(3)2013年12月に「生活困窮者自立支援法」が成立し、2015年4月施行となっている。これは生活保護法の一部を改正し、生活全般の支援事業を自治体が実施するものであり、その事業の1つに「子どもの学習支援」があげられている。この法律は2018年10月に一部法改正され、他方(ひとり親家庭支援、社会教育法)に基づく学習支援事業との一層の連携を謳っている。教育総研では一昨年度から学習支援事業の進捗状況を調査し、2018年度も1市1町(輪島市、川北町)以外で、小・中学生を対象とした学習支援が実施されている。国が1/2負担する事業でもあり、全県的なとり組みの拡大を呼びかけたい。(未掲載)

  2018 自治体奨学金制度比較(PDF)

  2018 自治体就学援助受給状況(PDF)

 

2017年度決算における学校図書館図書費、自治体比較

  「蔵書達成率」小中とも100%は8市6町
  「措置率」国が基準見直し、達成1市1町のみ

1.経過

(1)学校図書館整備がまだ不十分として、2017年度から新たに「学校図書館図書整備5カ年計画」(~2021年度)が始まり、蔵書整備で単年度約220億円、新聞配備で30億円、加えて学校図書館担当職員(司書、常勤または非常勤、教員やボランティア含まない)配置に約220億円(週30時間勤務で1.5校に1名配置が可能)が、いわゆる「一般財源」として措置されている。

蔵書達成率は文科省が学校図書館に整備すべき蔵書の標準として、1993年3月、自治体の学級数ごとの計算式を定めている。これによれば、小学校18学級の場合、10,360冊、中学校15学級の場合、10,720冊となる。なお、文科省によれば、学校図書館図書達成率(2018年度集計)は小学校で66.4%、中学校で55.3%、新聞の配備は小学校41.1%、中学校37.7%となっている。
 本調査は2018年度に行っているが、2017年度に確定した決算データを各自治体にお願いし、集計と分析を行っている。

(2)質問項目にある基準財政需要額については、国の地方交付税教育費の積算基礎、2017年度の学校図書館図書・新聞費は、小学校では標準施設(学級数18)1校あたり、77,9000円となっており、1学級あたりでは43,278円となる。したがって、当該市町における交付税措置額(A)は、次の算式で求められる。

  A=779千円/18学級×当該市町の学級数×補正係数

また、中学校では標準学級数は15,1校あたり1,048,000円となり、1学級では69,867円となる。補正係数とは自治体の自然的・社会的状況の違いから行政経費の差を反映させるために、割り増しや割落としを行う数値である。

(3)児童生徒1人あたりの図書費については、基準額を学級定数40人で割り算すれば、小学校で約1082円、中学校は1747円となるが、平均的な学級人数はさらに少ないことから、教育総研では当初から小学校1200円、中学校2000円を目安としてきた。近年、学級人数が少ない過疎地域の学校では算定基準が学級数であることから、この数値は大きくなることとなり、予算措置も充実してきたことから、この数値を超える自治体が多くなっている。

 

2.自治体比較分析

(1)文科省基準による図書館蔵書達成率について、100%を超えた自治体は小学校では10市8町で達成(2016年度11市8町全て、2015年度10市7町)、中学校では7市7町(

2016年度8市5町、2015年度6市3町)と概ね達成されている。また、小中とも100%を達成しているのは、加賀市、小松市、能美市、白山市、野々市市、金沢市、かほく市、羽咋市、川北町、内灘町、宝達志水町、志賀町、中能登町、能登町の8市6町(2016年度7市5町、2015年度6市4町)となっており、ここでも増加傾向が見られる。しかし、文科省も古い図書が保有されている状況を指摘しており、学校図書館司書配置が充実することで、廃棄が適正に行われれば、この達成率に影響する自治体が出てくることも考慮する必要がある。

(2)基準財政需要額に対する決算額割合の考え方(措置率とも表記される)は、国が基準を示して交付税措置をするとしている以上、100%を達成することが自治体に求められることになる。しかし、自治体にとっては、多種多様な項目に対応した交付税措置がなされているとの認識はなく、自治体の判断で予算化される傾向がある。2017年度は調査過程でこの学校図書館図書費(蔵書・新聞)の基準額は前年度より約30%増となっていることが判明した。これに対し、自治体では十分な対応がなされず、2017年度決算では、小中とも100%を達成した自治体は、珠洲市と川北町の1市1町に止まり(2016年度、2015年度とも5市2町)となり、来年度に課題を残している。

(3)1人あたりの図書費は、予算配当の充実した自治体や小規模校の多い自治体で、教育総研が設定した基準を満たしている。小中とも基準を達成しているのは、白山市、金沢市、珠洲市、川北町、穴水町、能登町の3市3町(2016年度3市3町)と自治体の入れ替わりはあったものの、前年度と同様の結果となった。なお、小学校では9市8町で達成が見られるものの、中学校では3市2町に止まり、さらなる予算配当が望まれる。また、文科省の基準額が増加していることから、次年度はこの数値も見直すことを検討したい。
 なお、措置率と蔵書達成割合については、相関図で表記している。(未掲載)

  2017決算に見る図書館図書費(PDF)


学校図書館司書の配置比較

  全市町配置も89.8%が非正規雇用
  専任、フルタイムは3市2町のみ

1.経過

(1)1996年6月に学校図書館法の一部改正がなされ、2003年4月から12学級以上すべての公立学校に司書教諭が発令されることとなった。しかし、同法2条2項「司書教諭は教諭を持って充てる」となっており、いわゆる「充て」司書教諭が発令されている。そのため、学校では学級担任等の通常勤務との兼務となり、図書館業務には手が回らない実態は解消されていない。

(2)2014年6月に再び、「学校図書館法の一部を改正する法律」が成立(2015.4施行)し、学校図書館司書が法的に位置づけられた。当時、全国平均で半数の学校(文科省調査:2012年度、小学校47.8%、中学校48.2%)にしか司書配置がなされていない中で、この法改正は学校現場の要請が結実したものと言える。文科省による「第4次学校図書館図書整備5カ年計画」(2012~2016)が終了し、引き続き第5次計画(2017~2021)に入っている。この中で学校司書の配置は週あたり30時間の職員をおおむね1.5校に1名程度配置可能な予算措置として、単年度で220億円を措置している。ちなみに2016年度の文科省調査によれば、司書の配置学校は小学校59.3%、中学校57.3%となっており、5年間で約10%増加している。しかし、この予算は司書の全校配置にはまだまだ不十分な予算であり、結果的に自治体間の格差を生み出すこととなる。

(3)2016年、文科省「これからの学校図書館の整備充実について(報告)」では、「教育委員会は、学校司書として自ら雇用する職員を置くよう努める必要がある。学校教職員の一員として、学校司書が職員会議や校内研修等に参加するなど、学校の教育活動全体の状況を把握したうえで職務に当たることも有効である。」としている。しかし、常勤(専任・フルタイム勤務)配置の学校は18.7%に止まっている。(2017文科省調査)

2.今年度の状況と課題
(1)教育総研が調査を始めて17年となり、2014年度にそれまで配置のなかった1つの自治体がその年の10月に配置を行い、県内すべての市町での配置が実現した。この間、教育総研のとりくみが自治体議会でも取り上げられ、マスコミ報道もされてきたことの成果と自負している。  2018年度は全県で196人(正規20人、非正規176人)と前年度より3人増加した。これは小松市が兼務を解消したことが主な要因であり、1校1名配置のいわゆる専任司書配置は昨年度の能美市、白山市、野々市市、志賀町、中能登町に再び小松市が加わり、4市2町となった。

(2)司書の雇用状況も継続して調査しているが、依然、大多数(89.8%)が非正規職員で短時間勤務、有期雇用であり、3市4町が雇用の際に資格を条件としていない。このことが、採用条件に影響していないか懸念される。ちなみに「臨時」雇用とされた場合、継続雇用を認めていない例もみられる。
 正規職員が雇用されているのは、昨年同様、2市3町、能美市、白山市、川北町、津幡町、宝達志水町となっている。今年度も白山市は半数超の正規雇用を確保し、非正規職員でも専任・フルタイム勤務となっており、特筆される。しかし、正規、非正規が混在する自治体では、同一労働でありながら、待遇に格差が生ずる課題が残されている。

(3)日教組学校図書館職員対策委員会は、2018年8月から9月にかけて「学校司書等に関する実態調査」を小中高対象に行い、全都道府県から抽出で2185人から回答を得ている。それによれば、学校司書が「配置されていない」は小学校で23.2%、中学校で26.6%と1/4程度を占めている。また、「配置されている」学校のうち、フルタイム勤務は小学校で18.5%、中学校で18.4%といずれも2割弱に止まり、18学級以上の大規模校でも2割強に過ぎないことが明らかになっている。

  調査に寄せられた声として、司書が配置されていることで「教員の時間的・精神的な余裕のない現場で、不特定多数の子どもたちと関わることができる学校司書は、なかなか居場所を見つけることができない子どもたちにとって欠かすことができない存在になっている。」(小学校)「学校司書の配置で本の貸し出し、著しく増加した。授業活用では多種多様な資料が用意され、生徒の学びが深まり、広がりつつある。」(中学校)などのメリットや司書不在に伴う課題も多く出されている。

(4)勤務時間が1日7時間以上、週35時間以上の「フルタイム勤務」をとっているのは7市4町となっている。その中で「専任」としているのは、能美市、白山市、野々市市、志賀町、中能登町の3市2町となっており、白山市では学校職員の一員として職員会議に参加しているとの報告も受けている(該当自治体未調査)。
 引き続き国には自治体間格差を生じさせないよう適切な予算配当を求め、自治体には教育総研が掲げる「専任配置」「フルタイム勤務」「正規職員化」の実現を求めていく必要がある。

  2018 司書配置状況(PDF)

 

 

2018年度「公正な教科書採択を求める市民集会」

教科書の「教材化」にとり組もう

 11月23日、金沢市ものづくり会館を会場に、「公正な教科書採択を求める市民集会」(呼びかけ人、田村光彰・二俣和聖・川本樹)が開催されました。この集会は、2015年に県内3市で中学校社会科教科書に育鵬社が採択されたことから、再びこうした事態とならないよう、県内教育関係市民で構成する「子どもと教育を考える・いしかわ市民の会」(事務局・教育総研)が、県内市民に広く呼びかけて学習会を開催しているものです。会場には県教組組合員に一般市民、退職教員や報道関係者等、116名が参加しました。

 講演には池田賢市さん(中央大学・教育文化総合研究所所長)をお願いしました。テーマは「教科書をめぐる実践的課題と問題点」。池田さんはまず、学習指導要領の変遷に触れ、それが時々の時代(社会)の要請によるものであり、教育が社会に出ていくための準備と位置づける「教育の保守的機能」と、一方では社会変革の手立てとなる「教育の革新的機能」がある。現状では前者「保守的機能」ばかりが重視され、このことが教科書にどう活用さていれるのか考えて見たいとされました。学習指導要領の変遷に触れ、当初の学校現場の自主性尊重が、全国統一の内容の習得に、さらに経済発展のための人材養成、詰めこみ教育への反省から「ゆとり」教育へ、これが学力低下批判につながり、現在は再び教科や内容の増加、さらに今回の改訂では教育方法や評価まで規定するに至っていると指摘されました。
 今回の改訂の背景には2006年の「改正」教育基本法があり、家庭教育のあり方を規定したり、企業や警察等、様々な社会的組織が公教育に関与することを可能とするなど、教育の民営化や中立性の侵害などが懸念される。また、改訂の前提に「社会の急激な変化」「予測不可能」な事態への対応という、OECDの教育理念を忠実に体現している。つまり、権力行使しうる側の「言いたい放題」になり、学校現場に「足し算」ばかりが要求され、多忙化に一層の拍車がかかる。また、社会の要請は「感性」とされ、これが内心の自由を侵害することにつながり、道徳の教科化がこの具体化だとされました。

 この学習指導要領の基に教科書が作られており、検定基準には閣議決定の内容が反映させられ、教材とは言え、使用義務も課せられることから、学校現場の課題を反映させる授業作りが難しくなっている。しかし、教材である以上、改めて「教材化」し直すことは各教員には任されているはずだ。多忙化の中でも「子どもたちの姿・生活」を入れ込んでいくことが大切だとされました。最後にすでに教科となっている小学校道徳教科書の「有名教材」を取り上げ、「人権」という視点で捉え直すと何が見えてくるか、として1年「かぼちゃのつる」、2年「およげないりすさん」、3年「お母さんのせいきゅう書」などが取り上げられました。他の学習会で、「読むだけで害のある教材ってあるのですね」との感想を受けたとの紹介がなされました。

 パネルディスカッションに入り、パネリストとして政氏美香さん(羽咋)、藤田聡史さん(金沢)が登壇し、学力向上で数値結果が求められる教育現場の状況、多忙化のなかで自主的教材が導入できるのか、教科書使用のしばりがあるのか、等について率直に発言いただきました。教材を工夫する時間が持てないことや授業時間にテスト対策で過去問等が今も授業時間を使って実施されていることが明かされました。今の教育現場では様々な形で、「競争」が強いられ、しかも「見える化」が求められている。子どもたちの息苦しさや自己肯定感が低くなっていることにもっと眼を向けることの大切、会場との意見交換の中で確認されました。

 

 

2017年度 県自治体における教育予算等調査結果

「子どもの貧困対策」関連自治体施策
 
           自治体奨学金制度、依然4市町未実施!
   就学援助受給率、ほぼ横ばい。中学校は高い値。 

1.経過と現状

(1)2017年6月、厚生労働省が発表した2016年「国民生活基礎調査」で日本の子ども(18歳未満)の相対的貧困率※は、13.9%(7人に1人)となった。調査は3年おきになされており、過去最低だった前回より、2.4ポイント下がり12年ぶりに改善したという。ただ経済協力開発機構(OECD)の直近のデータによれば、加盟36カ国の平均は11.4%であり、日本はこれを上回っている。

※「相対的貧困率」国民一人ひとりの所得を高い順に並べ、真ん中の所得の半分(貧困線)に満たない人の割合をいう。

(2)2013年6月19日、国会で「子どもの貧困対策の推進に関する法律」(以下、貧困対策法)が全会一致で可決成立した。法の目的を「子どもの将来が、生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子どもの貧困対策に関し、基本理念を定め、対策を総合的に推進すること」としている。第8条では、大綱として、教育の支援、生活の支援、保護者への就労支援、経済的支援などについて定めている。この対策法は2014年1月17日に施行され、国は今後子どもの貧困率の改善や支援に関する大綱を作成、それに基づき、都道府県は子どもの貧困対策計画をつくることになるが、これは努力義務にとどまっている。

(3)授業料以外でも私費負担が多額になっている。一般的な返済を必要とする貸与型奨学金は04年度に制度改変し、独立行政法人「日本学生支援機構」に所管が移行した。機構の奨学金は無利子と有利子の2種類で、貸与された奨学金の返済は卒業して6ヶ月後から始まり、就職の可否に関わらず、3ヶ月滞納するとブラックリストに載せられる。2012年度では33万人が返済延滞者とされ、返還金の回収強化が図られている。
 そうした中、文科省は2017年度から返済の必要がない給付型奨学金の支給を始めた。当初は2650人、2018年度には本格スタートをさせるとして2万人程度を予定しているという。対象は大学等の進学を希望し、住民税が非課税となっている世帯が対象で月2~3万円程度。ただ必要としている全ての学生には行き渡らず、給付額も大学に通うには十分とはいえないと指摘もあり、今後の課題となっている。

(4)就学援助は、生活保護世帯と、それに準じて生活が困窮している「準要保護」の子どもが対象となっており、生活保護世帯は国が補助、準要保護は市区町村が平均年7万円相当を補助している。2013年度では小中学生全体の15.4%を占めているが、国が13~15年に生活保護基準を下げたことで対象者8割に影響するとされており、自治体が定める基準(概ね生活保護基準の1,3倍)の見直しが迫られている。しかし、「子どもの貧困率」の増加と共に財政状況の厳しい自治体負担が大きくなる傾向もあり、自治体間にバラツキが出ていると言われている。貧困対策法の趣旨を生かすには、自治体に運用を任せるのではなく、補助金の確保、所得制限の緩和、援助費目や金額の拡充がより一層必要となる。

2.県内自治体の比較分析と課題

いしかわ教育総研は子ども支援施策について、今年度も県内のすべて自治体に「就学援助制度」「奨学金制度」と「学習支援施策」について調査依頼した。

(1)「就学援助」については、経年経過を見ると、概ねどの自治体も受給割合の増加傾向が続いてきたものの、ここ数年は全体的には下げ止まり傾向となっている(県平均は小学校で12.2%、中学校で14.4%)。2017年度は県内受給者の半数を占める金沢市が数値を下げていることがその原因と考えられる。今年度の結果を個別に見ると、前年度より上昇しているのは小学校10/19市町、中学校10/19市町となっており、全児童生徒数に対し10%を超える自治体は、小学校で5市1町、中学校で9市2町となっており、小松市、羽咋市が初めて10%超となるなど、中学校で増加している。この結果は生活保護基準と連動していることから、自治体の支給基準(生活保護基準の1.3倍)の見直しがなくても、支給対象者に影響していないか、実態把握の必要がある。
 今年度も金沢市が昨年度より低下したものの、小中それぞれ、15.3%、18.8%と依然高い受給率を示し、白山市では小中それぞれ18.0%、17.5%と上昇傾向が大きくなってきている。これは「子どもの貧困」率との相関関係は否定できないが、制度に対する保護者への周知を丁寧に行っていることも、影響していることも考えられる。本年度は新たに周知の手立ても調査しており、受給率の高い金沢市では「新入学児童検診時に、制度のお知らせ配布。毎年度はじめに、学校から全児童生徒へ制度のお知らせと申請書を配布。ホームページや、新聞広報に掲載」とあり、白山市でも「4月に学校を通して全児童生徒にお知らせと申請書を配布、市のHPや広報4月号掲載」とのこと。また、町で受給率の高い能登町では「各学校から在学している全児童生徒の世帯へ文書で案内している」とあり、いずれも丁寧な周知方法がとられている。

(2)「奨学金制度」については、19市町中、何らかの制度をもつ自治体は15、その内、9自治体が「給付型」の制度を取っているが、応募者数と採用数に自治体によっては乖離が見られることから、審査基準が制度を必要とする子どもたちへの妨げになっていないか検証する必要がある。この内、創設4年目の白山市は高校生を対象に給付型の制度をとっているものの、希望者に対応した支援には不十分と指摘されており、七尾市は予算総額の中で支援を行うことから、毎年給付金額が変動している。なお、15年度制度を始めた中能登町には最初の給付対象者があった。一方、依然4自治体が未実施であり、石政連議員等を通じて制度の設立や貸与型のみの自治体には給付型への変更を求めていく必要がある。

PDF 2017年度 就学援助受給状況

PDF  2017 自治体奨学金制度


2016
年度決算における学校図書館図書費の自治体比較経過

   図書館図書費全体的に充実、自治体間格差は課題

1.経過

(1)学校図書館整備がまだ不十分として、2017年度から新たに「学校図書館図書整備5カ年計画」(~2021年度)が始まり、蔵書整備で単年度約220億円、新聞配備で30億円、加えて学校図書館担当職員(司書、常勤または非常勤、教員やボランティア含まない)配置に約220億円(週30時間勤務で1.5校に1名配置が可能)が、いわゆる「一般財源」として措置されている。

蔵書達成率は文科省が学校図書館に整備すべき蔵書の標準として、1993年3月、自治体の学級数ごとの計算式を定めている。これによれば、小学校18学級の場合、10,360冊、中学校15学級の場合、10,720冊となる。なお、文科省によれば、学校図書館図書達成率(2015年度集計)は小学校で66.4%、中学校で55.3%となっている。  本調査は2017年度に行っているが、2016年度に確定した決算データを各自治体にお願いし、集計と分析を行っている。

(2)質問項目にある基準財政需要額については、国の地方交付税教育費の積算基礎、2014年度の学校図書館図書・新聞費は、小学校では標準施設(学級数18)1校あたり、608,000円となっており、1学級あたりでは約33,778円となる。したがって、当該市町における交付税措置額(A)は、次の算式で求められる。

  A=608千円/18学級×当該市町の学級数×補正係数

また、中学校では標準学級数は15,1校あたり825,000円となり、1学級では55,000円となる。補正係数とは自治体の自然的・社会的状況の違いから行政経費の差を反映させるために、割り増しや割落としを行う数値である。

(3)児童生徒1人あたりの図書費については、基準額を学級定数40人で割り算すれば、小学校で約845円、中学校は1375円となるが、平均的な学級人数はさらに少ないことから、教育総研では小学校1200円、中学校2000円を目安としてきた。学級人数が少ない過疎地域の学校では算定基準が学級数であることから、この数値は大きくなることとなり、予算措置も充実してきたことから、この数値を超える自治体が多くなっている。

2.自治体比較分析

(1)文科省基準による図書館蔵書達成率について、100%を超えた自治体は小学校では11市8町全てで達成(2015年度10市7町、2014年度11市7町)、中学校では8市5町(2015年度6市3町、2014年度6市3町)と着実に増加傾向を示している。また、小中とも100%を達成しているのは、加賀市、小松市、能美市、白山市、金沢市、かほく市、羽咋市、川北町、内灘町、宝達志水町、志賀町、中能登町の7市5町(2015年度6市4町、2014年度6市3町)となっており、ここでも増加傾向が顕著となっている。しかし、文科省も古い図書が保有されている状況を指摘しており、学校図書館司書配置が充実することで、廃棄が適正に行われれば、この達成率に影響する自治体が出てくることも考慮する必要がある。

(2)基準財政需要額に対する決算額割合の考え方(措置率とも表記される)は、国が基準を示して交付税措置をするとしている以上、100%を達成することが自治体に求められることになる。しかし、自治体にとっては、多種多様な項目に対応した交付税措置がなされているとの認識はなく、いわゆる「お金に色はついていない」と言われることから、自治体の判断で予算化される傾向がある。しかし、2016年度決算では、小中とも100%を達成した自治体は、昨年度と同様に、加賀市、小松市、白山市、金沢市、珠洲市、川北町、中能登町の5市2町(2015年度 5市2町)となり、この2年で手厚い予算配当を行う自治体が固定化してきた。

(3)1人あたりの図書費は、予算配当の充実した自治体や小規模校の多い自治体で、教育総研が設定した基準を満たしている。小中とも達成しているのは、白山市、金沢市、珠洲市、川北町、中能登町、穴水町の3市3町(2015年度4市3町)と前年度よりやや減少しているが、小学校では9市7町で達成が見られることから、中学校へのさらなる予算配当が望まれる。
 なお、措置率と蔵書達成割合については、相関図で表記している。

PDF 2016年決算・図書館図書費

PDF   2016決算・図書館図書費相関図

 

2017年度 学校図書館司書の配置・比較分析

  全市町に司書配置も、専任、正規雇用、まだまだ

1.経過

(1)学校図書館司書配置の実態調査は、「いしかわ教育総研」発足の2002年度から実施しています。当時の教育総研年報によれば、「県内8市の実態調査を行ったが、松任市(現白山市)、加賀市、小松市に配置があるが、正規雇用職員は一部で、全校配置も少ない。その中で松任市は98年に市内13の小中学校すべてに配置がなされ、02年からは一部残っていた臨時雇用を解消し、すべてを正規雇用職員とする決定を行った。こうした配置は全国的にもきわめて異例と言われ、多くの視察も受け入れている。」との報告がなされている。

(2)1996年6月に学校図書館法の一部改正がなされ、2003年4月から12学級以上すべての公立学校に司書教諭が発令されることとなった。しかし、同法2条2項「司書教諭は教諭を持って充てる」となっており、いわゆる「充て」司書教諭が発令されている。そのため、学校では学級担任等の通常勤務との兼務となり、図書館業務には手が回らない実態は解消されていない。

(3)2014年6月に再び、「学校図書館法の一部を改正する法律」が成立(2015.4施行)し、学校図書館司書が法的に位置づけられた。全国平均で半数の学校(文科省調査:2012年度、小学校47.8%、中学校48.2%)にしか司書配置がなされていない中で、この法改正は学校現場の要請が結実したものであり、運動の成果と言える。文科省は先の「第4次学校図書館図書整備5カ年計画」で、この学校司書の配置に対し、週あたり30時間の職員をおおむね2校に1名程度配置可能な予算措置、単年度で150億円を措置している。この予算は2015年度の場合、1校あたり約45万円に相当するが、司書の全校配置を求める教育総研の運動にはまだまだ不十分な予算であり、結果的に自治体間の格差を生み出すこととなる。

(4)2016年、文科省「これからの学校図書館の整備充実について(報告)」では、「教育委員会は、学校司書として自ら雇用する職員を置くよう努める必要がある。学校教職員の一員として、学校司書が職員会議や校内研修等に参加するなど、学校の教育活動全体の状況を把握したうえで職務に当たることも有効である。」としている。しかし、常勤(専任・フルタイム勤務)配置の学校は18.7%に止まっている。(2017文科省調査)

(5)2016年10月25日付け(北陸中日新聞)の新聞報道によれば、文科省調査で、公立小中学校への司書配置は全体の6割未満(小学校約59%、中学校約57%)であり、前年度比で5%増にとどまっているとのこと。また、先進県としてほぼ100%の配置が小学校で島根・山梨、中学校で島根・鳥取が挙げられているが、教育総研調査では100%配置の石川県は小学校92%、中学校91%となっている。

2.今年度の状況と課題

(1)教育総研が調査を始めて16年となり、14年度まで配置のなかった1つの自治体がその年の10月に配置を行い、県内すべての市町での配置が実現した。この間、教育総研のとりくみが自治体議会でも取り上げられ、マスコミ報道もされてきたことの成果と自負している。昨年度は自治体ごとに専任を少しずつ増やす動きがあり、一昨年度より6名増の121人(正規18人、非正規103人)となった。今年度は113人(正規17人、非正規96人)と減少、小松市が5名を2校兼務としたことが大きく影響している。2017年度、専任司書を配置している自治体は能美市、白山市、野々市市、志賀町、中能登町の3市2町となり、中能登町が専任で全校配置を実現した。

(2)司書の雇用状況も継続して調査しているが、依然、大多数(89.6%)が非正規職員で短時間勤務、有期雇用であり、4市3町が雇用の際に資格を条件としていない。このことが、採用条件に影響していないか懸念される。一方で正規職員が雇用されているのは、昨年同様、能美市、白山市、川北町、津幡町、宝達志水町となっている。この中で、白山市は半数超の正規雇用を確保しているものの、非正規職員でも専任・フルタイム勤務であり、同一労働でありながら、待遇に格差が生じている課題が指摘されている。

(3)日教組学校図書館職員対策委員会は、2017年7月から8月にかけて「学校司書等に関する実態調査」を行い、35都道府県215自治体、317人から回答を得ている。それによれば、身分・勤務条件・職務の内容等の実態報告がなされており、概ね石川県の実態とは変わりはない。寄せられた石川県内の兼務司書からは、「人がいない図書館に子どもの足が遠ざかり、読書離れにもつながる。各校1名の専任が望ましい」「現在小学校と中学校を兼務しているが、1校専任を強く希望する」と専任の意義が強く訴えられている。また、雇用・勤務条件に関して「勤務年数に関して、はっきり明言されていない。雇用時5年と言われて5年目を迎える司書が多く、継続を望む声にも明確な答えがない」「国語科に力を入れている学校のため、司書に求められることも多いが、時間内にこなすことが出来ず、結局持ち帰り仕事になっている。賃金を考えると空しさを感ずる」等の声が寄せられている。

(4)司書が配置されることで、学校図書館をめぐる環境が劇的に変わる。2017年4月8日付け北陸中日新聞で、「貸し出し増、広がる本の世界」との報道がなされた。その中で取材された金沢市では全校に司書配置がなされた2011年度より5年間で、貸出数で40~50%増加したとのことであり、常駐することで展示の工夫、読み聞かせ、授業で使う本の準備ができるようになったとのこと。また、全校専任の司書が配置されている白山市では学校職員の一員として職員会議に参加しているとの報告も受けている。引き続き国には自治体間格差を生じさせないよう適切な予算配当を求め、教育総研が求めてきた「専任司書配置」「フルタイム勤務」「正規職員化」を自治体に求めていく必要がある。

PDF 2017年度図書館司書配置状況

 

 

2017年度公開研究講座
「公正な教科書採択を求める市民集会」

 

「学力観」の固定化に警鐘

 11月19日、能美市・辰口福祉会館を会場に「公正な教科書採択を求める市民集会」が91名の参加で開催されました。この集会は日教組の教育キャンペーンの一環として、石川県では「子どもと教育を考える・いしかわ市民の会」が主催、県内教育関係者と市民に参加を呼びかける集会としています。2006年の第1次安倍政権が強行した教育基本法の改悪を契機に、この集会を継続してきましたが、特に、昨年からは2015年に県内3市で不透明な形で採択がなされた育鵬社の中学校社会科教科書を再び採択させないための広範な運動拡大を目指しています。今回講師としてお願いした善元幸夫さん(東京学芸大)は小学校勤務の傍ら、様々な総合学習の授業を作り続け、退職後は東アジア地域での教育交流を続けています。
 善元さんは、冒頭、指導要領改訂にふれ、とにかく膨大な量になっており、週5日は成り立たず、土曜授業の復活や夏休みの短縮まで文科省は言い出し、これでは学校現場は対応できなくなる。「資質・能力」が全面に出され、教育の目標だけでなく、指導の方法まで指示している。これまで、私達は「教科書で教える」と言ってきたが、これからは「教科書を教える」多様性を認めない姿勢だと指摘されました。本来「学力」についても多様なとらえ方があるはずで、2007年に学教法でこの「学力」を規定したことが問題であり、今日の全国テストは「学力向上」を強いており、明らかに公教育を壊している、とも指摘されました。
 パネルディスカッションではコーディネーターに呼びかけ人の川本樹さん。パネラーとして現職社会科教員の島田一郎さん(金沢市)、中澤毅さん(小松市)にお願いしました。現場で使われ始めた育鵬社教科書の教材から、島田さんは歴史教科書に触れて、世界史の記述が薄く、日本の歴史に特化され、日本人はすばらしいという記述が目立ち、国を動かした人物を多く取り上げ、民衆の力にはほとんど触れていないと紹介。中澤さんは公民教科書について、教科書を見ると、とても違和感を感ずるとして、例えば家族の役割では、「あるべき家族像」が失われているという主張や個人主義が家族の一体感を失わせている、などの記述があると紹介。憲法の記述でも、GHQが受入をきびしく迫ったと言う記述や、「立憲主義」でもだれが守るべきなのかとの記述が薄められているとの指摘がありました。
 会場との質疑の中では、若い世代のとらえ方や職場の中での共通認識の難しさについても話題が広がりました。善元さんはまとめの中で、韓国では朴政権のもとで国定教科書を創られたが、これを民主主義の力で廃棄させた。最悪の指導要領改訂を前に、目の前の子供たちに何を伝えるか、それぞれが自主編成の大切さを問いなおそうと訴えました。  集会は、育鵬社教科書が採択された加賀・小松・金沢の市民団体から、決意表明を受けて終了しました。この集会、来年度は金沢市で開催を予定しています。

 

2016年度 11市9町教育予算等調査結果

専任司書やや増も非正規依然91%

 教育総研が発足以来続けている、県内自治体における教育予算等調査の結果が集約され、3月7日の第4回教育政策研究部会で検討協議を行いました。  2015年度決算にみる学校図書館図書費は自治体の努力で、国の基準財政需要額を達成する自治体(小中とも達成4市3町)が前年度比で1自治体減少したものの、全体的には予算配当が充実してきました。ただ、ここでも中学校への配当がさらに求められます。  2016年度図書館司書配置状況については、昨年未配置の1町が配置を決めたことで、すべての市町に配置が実現しました。また専任司書も昨年度より6名増加、すべて専任化している自治体は1町増え、4市1町となりました。一方では非正規職員が多数(91%)を占めていることが大きな課題であり、雇用の不安さに加え、待遇にも課題が残っています。  以下に分析と県内10市9町の比較データを掲載します。

2015年度決算における学校図書館図書費の自治体比較

1.経過

(1)2012年度から「学校図書館図書整備5カ年計画」(~2016年度)が始まり、蔵書整備で単年度約200億円、新聞配備で15億円、加えて学校図書館担当職員(司書、常勤または非常勤、教員やボランティア含まない)配置に約150億円(週30時間勤務で2校に1名配置が可能)が、いわゆる「一般財源」として措置されている。蔵書達成率は文科省が学校図書館に整備すべき蔵書の標準として、1993年3月、自治体の学級数ごとの計算式を定めている。これによれば、小学校18学級の場合、10,360冊、中学校15学級の場合、10,720冊となる。なお、文科省によれば、学校図書館図書達成率(2012年度)は小学校で56.8%、中学校で47.5%となっている。

(2)質問項目にある基準財政需要額については、国の地方交付税教育費の積算基礎、2014年度の学校図書館図書・新聞費は、小学校では標準施設(学級数18)1校あたり、608,000円となっており、1学級あたりでは約33,778円となる。したがって、当該市町における交付税措置額(A)は、次の算式で求められる。
   A=608千円/18学級×当該市町の学級数×補正係数

また、中学校では標準学級数は15,1校あたり825,000円となり、1学級では55,000円となる。補正係数とは自治体の自然的・社会的状況の違いから行政経費の差を反映させるために、割り増しや割落としを行う数値である。

(3)児童生徒1人あたりの図書費については、基準額を学級定数40人で割り算すれば、小学校で約845円、中学校は1375円となるが、平均的な学級人数はさらに少ないことから、教育総研では小学校1200円、中学校2000円を目安としてきた。学級人数が少ない過疎地域の学校では算定基準が学級数であることから、この数値は大きくなることとなり、予算措置も充実してきたことから、この数値を超える自治体が多くなっている。

2.自治体比較分析

(1)文科省基準による図書館蔵書達成率について、100%を超えている自治体は小学校で11市7町(2013年度8市6町、2012年度6市3町)、中学校では6市3町(2013年度4市3町、2012年度3市3町)と増加傾向にある。また、小中とも100%を達成しているのは、小松市、能美市、白山市、金沢市、かほく市、羽咋市、川北町、志賀町、中能登町の6市3町(2013年度4市3町、2012年度3市2町)となっており、ここでも増加傾向が顕著となっている。しかし、学校図書館司書配置が充実することで、廃棄が適正に行われれば、この達成率に影響する自治体が出てくることも考慮する必要がある。

(2)基準財政需要額に対する決算額割合の考え方は、国が基準を示して交付税措置をするとしている以上、100%を達成することが自治体に求められることになる。しかし、自治体にとっては、多種多様な項目に対応した交付税措置がなされているとの認識はなく、いわゆる「お金に色はついていない」と言われることから、自治体の判断で予算化される傾向がある。しかし、2014年度決算では、小中とも100%を達成した自治体は、昨年度より大幅に増加し、加賀市、小松市、白山市、金沢市、珠洲市、川北町の5市1町(2013年度白山市、川北町の1市1町)となり、手厚い予算配当が実現したと言える結果となった。

(3)1人あたりの図書費は、予算配当の充実した自治体や小規模校の多い自治体で、教育総研が設定した基準を満たしている。小中とも達成しているのは、加賀市、白山市、金沢市、輪島市、珠洲市、川北町、中能登町、穴水町の5市3町(2013年度5市4町)と前年度よりやや減少しているが、小学校では8市7町で達成が見られることから、中学校のさらなる予算配当が望まれる。

   2015年度末 自治体図書館図書費 (PDF)

 

2016年度 学校図書館司書の配置・比較分析

1.経過

(1)学校図書館司書配置の実態調査は、「いしかわ教育総研」発足の2002年度から実施しています。当時の年報によれば、「県内8市の実態調査を行ったが、松任市(現白山市)、加賀市、小松市に配置があるが、正規雇用職員は一部で、全校配置も少ない。その中で松任市は98年に市内13の小中学校すべてに配置がなされ、02年からは一部残っていた臨時雇用を解消し、すべてを正規雇用職員とする決定を行った。こうした配置は全国的にもきわめて異例と言われ、多くの視察も受け入れている。」との報告がなされています。

(2)1996年6月に学校図書館法の一部改正がなされ、2003年4月から12学級以上すべての公立学校に司書教諭が発令されることとなりました。しかし、同法2条2項「司書教諭は教諭を持って充てる」となっており、いわゆる「充て」司書教諭が発令されています。そのため、学校では学級担任等の通常勤務との兼務となり、図書館業務には手が回らない実態は解消されていません。

(3)2014年6月に再び、「学校図書館法の一部を改正する法律」が成立(2015.4施行)し、学校図書館司書が法的に位置づけられました。全国平均で半数の学校(文科省調査:2012年度、小学校47.8%、中学校48.2%)にしか司書配置がなされていない中で、この法改正は学校現場の要請が結実したものであり、運動の成果と言えます。文科省は先の「第4次学校図書館図書整備5カ年計画」で、この学校司書の配置に対し、週あたり30時間の職員をおおむね2校に1名程度配置可能な予算措置、単年度で150億円を措置しています。この予算は2015年度の場合、1校あたり約45万円に相当します。司書の全校配置を求める教育総研の運動にはまだまだ不十分な予算であり、結果的に自治体間の格差を生み出すこととなります。

(4)2016年10月25日付け(北陸中日新聞)の新聞報道によれば、文科省調査で、公立小中学校への司書配置は全体の6割未満(小学校約59%、中学校約57%)であり、前年度比で5%増にとどまっているとのことです。また、先進県としてほぼ100%の配置が小学校で島根・山梨、中学校で島根・鳥取が挙げられていますが、なぜか100%配置の石川県は取り上げられていません。

2.今年度の状況と課題

(1)教育総研が調査を始めて15年となり、14年度まで配置のなかった1つの自治体が10月に配置を行い、県内すべての市町での配置が実現しました。この間、教育総研のとりくみが自治体議会でも取り上げられ、マスコミ報道もされてきたことの成果と自負しています。昨年度は自治体ごとに専任を少しずつ増やす動きがあり、2名増の115人(正規15人、非正規100人)となり、今年度はさらに121人(正規18人、非正規103人)となりました。また、専任司書を配置している自治体は小松市、能美市、白山市、野々市市、志賀町の5市となり、志賀町が専任で全校を実現しました。

(2)司書の雇用状況も継続して調査していますが、依然、大多数(91%)が非正規職員で短時間勤務、有期雇用であり、一部に無資格者の雇用も見られます。一方で正規職員が雇用されているのは、能美市、白山市、川北町、津幡町で昨年度から宝達志水町が加わりました。この間白山市は約半数の正規雇用を確保しており、昨年度2名減となったものの、今年度5名増となりましたが、依然フルタイム勤務でも待遇に格差が生じている課題が残されています。

(3)司書が配置されることで、学校図書館をめぐる環境が劇的に変わります。教育総研で白山市の東明小学校の学校図書館を視察(12年度年報、HP参照)した際、司書の創意工夫が掲示物や図書棚の配置など環境整備に生かされており、司書教諭と連携して図書館教育を担っているとの報告を受けています。また、本の貸出数も大幅に増加することの成果が報告されていることから、引き続き「専任司書配置」「フルタイム勤務」「正規職員化」を訴えていく必要があります。

       2016年度 自治体学校図書館司書 (PDF)  

 

2016年度 公開研究講座
育鵬社教科書を再び採択させない!

2016年度の教育政策部会が主催する公開研究講座は、育鵬社教科書の批判分析を採択地・小松市と加賀市の市民組織と共催する形で開催しました。
講師として教育総研所長の田村光彰さん、部会長の半沢英一さんにお願いし、再び採択が強行されないため、参加者とともに意思統一を行いました。
また、金沢市でも1月に市民組織が立ち上がり、結成総会を行いました。

「反面教師」として利用できる

7月30日、小松市において「教科書問題を考える市民の集い」が開催されました。参加者は94名、そのうち現職教職員以外から36名の参加がありました。この集会は小松の市民組織「教育を考える会・小松」(以下、考える会)と共催し、教育総研の公開研究連続講座としても位置づけています。

冒頭、挨拶に立った「考える会」代表の辰巳國雄さんは、自らが受けた戦中教育の体験と父親の出征に触れ、育鵬社教科書が当時の教科書と同様の歴史観で書かれており大変危惧している、と指摘されました。「考える会」は昨年の採択にあたり、教育委員会・教育長に、採択前の申し入れに始まり、採択後には経緯の不透明さに抗議する質問書を提出しています。

田村光彰・教育総研所長が講演を行いました。①育鵬社教科書は、相手の主張を書かず、「異なる見解」に触れていない。それは領土問題など多数にわたり、被害者側や相手にも視点を移すという教育の初歩的方法が欠落している。②その「異なる見解」を授業で提示すれば、この教科書を「反面教師」として利用できる。③前回育鵬社を採択しながら、今回採択しなかった自治体での取り組みにふれ、その運動に学ぶべきだ。との趣旨で、具体的事例を紹介しました。

質疑では、様々な立場から意見が出され、この問題の重要性を再確認する集会となりました。次回の学習会は8月20日、加賀市を会場に開催予定しています。

 

「日本会議」の主張を反映した育鵬社教科書

8月20日、加賀市内の会場で、「教科書問題を学ぶ集い」が参加者57名で開催されました。この集会は先の小松集会と同様に、地域の市民団体(子どもと教育を考える加賀市民の会)と教育総研が共催する形で持たれました。

まずは教育総研の教育政策部会長の半沢英一さんから、「神話と人権~育鵬社教科書の根本問題~」とテーマで講演がなされました。半沢さんは、現安倍政権閣僚のほとんど(16/20)が「日本会議」に所属している。この団体、神社本庁などに生き残った国家神道勢力を、70年代に生長の家学生運動に関わっていた活動家がコアになり形成され、憲法改正・国家神道復活を妄想する秘密主義カルト統一戦線と規定。その歴史認識にはアジア侵略の大義に神話を使うなど、国家神道の考えが色濃く反映されている。育鵬社教科書には、神話を肯定して人権を否定することが根幹をなしている、と指摘されました。

元中学校社会科教師の木村勝保さんは、公民教科書を取り上げ、従来使っていた東書版と比較し、見開きの写真の違いから取り上げるテーマが分かるし、憲法でも大日本帝国憲法を評価し、日本国憲法はGHQに「押しつけられた」という印象を与える表現となっている。平和主義として、現政権の防衛政策や自衛隊の記述が多い、などと指摘されました。参加者からは、現場ではすでに公民教科書が使われ始めており、不安が広がっているとの報告がありました。

この教科書問題の連鎖集会は、今後金沢集会を経て、11月20日に予定する全県対象の市民集会につなげて行くことにしています。

 

2016年度 ブックレット「読もう 考えよう 育鵬社教科書」発刊

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教育総研は昨年度後半から検討を進めてきた、ブックレット「読もう 考えよう 育鵬社教科書」を4月20日付けで発行しました。これは、昨年9月に金沢市教育委員会が中学校歴史教科書を、小松・加賀市が公民教科書も加えて、育鵬社を採択したことを受け、この教科書が企図する問題点をまとめたものになっています。装丁は104頁、冒頭に経過として採択のルールを無視した採択の不透明さを指摘し、本文では独善的な歴史認識の分析を、所長の田村光彰、部会長の半沢英一、小南浩一の皆様にお願いしました。
このサイトでは、執筆者別にブックレット記載内容をPDFで掲載します。学習資料として活用頂ければ幸いです。

1.目次          1603 目次
2.まえがき        1603 田村教科書「まえがき」
3.採択の経過       1601 育鵬社教科書採択経過
4.批判分析(田村光彰)  1603 田村育鵬教科書批判
5.批判分析(半沢英一)  1603 半沢育鵬社教科書
6.批判分析(小南浩一)  1604 小南教科書批判
7.執筆者紹介       1603 執筆者の紹介

 

2015年度 11市8町教育予算等の調査結果


 
図書館図書費は充実傾向、全自治体に司書配置
◎ 2014年度決算における学校図書館図書費の自治体比較
2014 決算における図書館図書費(PDF) 2014 自治体比較相関相関図(PDF)

1.経過
(1)2012年度から「学校図書館図書整備5カ年計画」(~2016年度)が始まり、蔵書整備で単年度約200億円、新聞配備で15億円、加えて学校図書館担当職員(司書、常勤または非常勤、教員やボランティア含まない)配置に約150億円(週30時間勤務で2校に1名配置が可能)が、いわゆる「一般財源」として措置されている。 蔵書達成率は文科省が学校図書館に整備すべき蔵書の標準として、1993年3月、自治体の学級数ごとの計算式を定めている。これによれば、小学校18学級の場合、10,360冊、中学校15学級の場合、10,720冊となる。なお、文科省によれば、学校図書館図書達成率(2012年度)は小学校で56.8%、中学校で47.5%となっている。
(2)質問項目にある基準財政需要額については、国の地方交付税教育費の積算基礎、2014年度の学校図書館図書・新聞費は、小学校では標準施設(学級数18)1校あたり、608,000円となっており、1学級あたりでは約33,778円となる。したがって、当該市町における交付税措置額(A)は、次の算式で求められる。 A=608千円/18学級×当該市町の学級数×補正係数 また、中学校では標準学級数は15,1校あたり825,000円となり、1学級では55,000円となる。補正係数とは自治体の自然的・社会的状況の違いから行政経費の差を反映させるために、割り増しや割落としを行う数値である。
(3)児童生徒1人あたりの図書費については、基準額を学級定数40人で割り算すれば、小学校で約845円、中学校は1375円となるが、平均的な学級人数はさらに少ないことから、教育総研では小学校1200円、中学校2000円を目安としてきた。学級人数が少ない過疎地域の学校では算定基準が学級数であることから、この数値は大きくなることとなり、予算措置も充実してきたことから、この数値を超える自治体が多くなっている。
2.自治体比較分析
(1)文科省基準による図書館蔵書達成率について、100%を超えている自治体は小学校で11市7町(2013年度8市6町、2012年度6市3町)、中学校では6市3町(2013年度4市3町、2012年度3市3町)と増加傾向にある。また、小中とも100%を達成しているのは、加賀市、小松市、能美市、白山市、金沢市、羽咋市、川北町、志賀町、中能登町の6市3町(2013年度4市3町、2012年度3市2町)となっており、ここでも増加傾向が顕著となっている。しかし、学校図書館司書配置が充実することで、廃棄が適正に行われれば、この達成率に影響する自治体が出てくることも考慮する必要がある。
(2)基準財政需要額に対する決算額割合の考え方は、国が基準を示して交付税措置をするとしている以上、100%を達成することが自治体に求められることになる。しかし、自治体にとっては、多種多様な項目に対応した交付税措置がなされているとの認識はなく、いわゆる「お金に色はついていない」と言われることから、自治体の判断で予算化される傾向がある。しかし、2014年度決算では、小中とも100%を達成した自治体は、昨年度より大幅に増加し、加賀市、小松市、白山市、金沢市、珠洲市、川北町の5市1町(2013年度白山市、川北町の1市1町)となり、手厚い予算配当が実現したと言える結果となった。
(3)1人あたりの図書費は、予算配当の充実した自治体や小規模校の多い自治体で、教育総研が設定した基準を満たしている。小中とも達成しているのは、加賀市、白山市、金沢市、輪島市、珠洲市、川北町、中能登町、穴水町の5市3町(2013年度5市4町)と前年度よりやや減少しているが、小学校では8市7町で達成が見られることから、中学校のさらなる予算配当が望まれる。

  ◎ 2015年度 学校図書館司書の配置・比較分析
2015 学校図書館司書配置一覧(PDF)

1.経過
(1)学校図書館司書配置の実態調査は、「いしかわ教育総研」発足の2002年度から実施している。当時の年報によれば、「県内8市の実態調査を行ったが、松任市(現白山市)、加賀市、小松市に配置があるものの、正規雇用職員は一部で、全校配置も少ない。その中で松任市は1998年に市内13の小中学校すべてに配置がなされ、2002年からは一部残っていた臨時雇用を解消し、すべてを正規雇用職員とする決定を行った。こうした配置は全国的にもきわめて異例と言われ、多くの視察も受け入れている。」との報告がなされている。
(2)1996年6月に学校図書館法の一部改正がなされ、2003年4月から12学級以上すべての公立学校に司書教諭が発令されることとなった。しかし、同法2条2項「司書教諭は教諭を持って充てる」となっており、いわゆる「充て」司書教諭が発令されている。そのため、学校では学級担任等の通常勤務との兼務となり、文科省の集計でも図書館業務に関わるのは週に1時間程度となっている。
(3)2014年6月に再び、「学校図書館法の一部を改正する法律」が成立し、学校図書館司書が法的に位置づけられた。全国平均で半数の学校(文科省調査:2012年度、小学校47.8%、中学校48.2%)にしか司書配置がなされていない中で、この法改正は学校現場の要請が結実したものであり、私たちの運動の成果と言える。文科省は先の「第4次学校図書館図書整備5カ年計画」で、この学校司書の配置に対し、週あたり30時間の職員をおおむね2校に1名程度配置可能な予算措置、単年度で150億円を措置している。この予算は2015年度の場合、1校あたり約45万円にすぎない。司書の全校配置を求める教育総研の要求にはまだまだ不十分な予算配当であり、結果的に自治体間の格差を生み出すこととなっている。

2.今年度の状況と課題
(1)教育総研が調査を始めて14年となり、昨年度は唯一配置のなかった自治体が10月に配置を行い、これで県内すべての市町で配置が実現した。この間、教育総研のとりくみが自治体議会でも取り上げられ、マスコミ報道もされてきたことの成果と自負している。昨年度は能美市や金沢市で採用人数が増え、今年度は自治体ごとに専任を少しずつ増やす動きがあり、全体としては昨年度の113人から115人(正規15人、非正規100人)となった。ただ専任司書を配置している自治体は小松市、能美市、白山市、野々市市の4市と昨年と変わっていない。
(2)司書の雇用状況も継続して調査しているが、依然、大多数が非正規職員で短時間勤務、有期雇用であり、自治体によっては無資格者の雇用も見られる。一方で正規職員が雇用されているのは、能美市、白山市、川北町、津幡町で今年度から宝達志水町が加わった。この間白山市は約半数の正規雇用を確保してきたものの、今年度の2名減は年度当初の退職によると聞いている。しかし、この白山市も全員がフルタイム勤務で、仕事内容も同じだが、その待遇に格差が生じていることが課題とされている。
(3)司書が配置されることで、学校図書館をめぐる環境が劇的に変わる。教育総研で白山市の東明小学校の学校図書館を視察(2012年度年報、HP参照)した際、専任司書の創意工夫が掲示物や図書棚の配置など環境整備に生かされており、司書教諭と連携して図書館教育を担っているとの報告を受けた。また、本の貸出数も大幅に増加しているとの成果が報告されていることから、改めて教育総研として「専任司書配置」「正規雇用化」を訴えていく必要がある。

 

    2015.7.4「教育政策部会」公開研究講座


「国際人権システムVS.『私たちの道徳』」
(要旨) 講師 半沢英一さん(金沢大学・「教育政策」部会長)
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・今日、安倍政権のもと、様々な形で教育の統制が進んでいる。その一連の動きの中で、本日のテーマ『私たちの道徳』についても、対症療法的に考えるのではなく、我々、日本の人権や民主主義を支えようとする人間が、どのような立脚点に立たねばならないかを、再確認する必要があると思ってきた。 Ⅰ国際民主主義の中の日本国憲法 ・まず我々の日本国憲法を国際民主主義の中で捉えることから始める。私の年来の主張だが、日本国憲法の担い手のほとんどが日本国憲法だけを支点としているのが、日本の民主主義の一大欠陥であり、国際人権論や国際人権システムの中の日本国憲法というとらえ方をすべきと思ってきた。
・まず、設問から始めると、日本国憲法は押しつけられたものということに対して、皆さんはどのような考えを持っておられるか。明確な答えを用意しておられない方も多いのではないか。
・私は、日本国憲法は、日本の支配層には押しつけられたものかもしれないが、日本の庶民にとっては、国際民主主義から贈られたものと理解している。
・とかく日本やアメリカを単一実体のものと思いがちだ。しかしアメリカにも様々な潮流があるし、日本も支配層と庶民とは違う。GHQといっても複雑な構造を持っていて、左派系の人達がワーキンググループとなって憲法の原案を作った。GHQ内には反動的な部局もあり、決して一枚岩ではなかった。
・例えば24条における婚姻の平等の詳細な規定は、大日本帝国憲法下での「日本の伝統」を押しつぶし、国際民主主義によって与えられた。『私たちの道徳』では男女の平等が最初から日本にあったように書いてあるが騙されてはいけない。 ・当時ワーキングブループにいたペアテ・シロタさんという女性が、かつて日本に住んでいたことから、日本の女性が非常に無権利な状態にあったかを知っていて、24条に詳細な規定を入れたという経緯がある。これこそ、国際民主主義の贈り物だ。
・日本国憲法は、大きな世界史的状況で作り出されたものだ。その経過を見ると第1次世界大戦と第2次大戦の大きな戦争があった。その第2次で大日本帝国が崩壊し、大英帝国の覇権がアメリカに移った。そのような状況で様々な動きが現れた。
・1944年ILOフィラデルフィア宣言は、「不屈の勇気」をもって「商品でない労働」を目指すとしている。今でもその闘いは渦中にある。労働派遣法の大改悪がなされた。3年で職場を追われる専門26業務の人たちは泣いていたではないか。人間のやることとは思えないことを、今の国会議員は平気でやっている。
・1945年国連憲章の2条3,4項、加盟国は紛争の平和的解決を目指し、武力行使は慎む、これが国連の大原則だ。国連憲章第51条の集団的自衛権は妥協の産物だ。
・1946年、ユネスコ憲章前文では、「戦争は人の心の中から生まれるもので、人の心の中に平和の砦を築かねばならない」としている。
・1947年日本国憲法が施行された。感動的なのは97条、人類の多年の努力成果で生まれたものだ。天賦人権説というより人賦人権説だ。人権を守るのは人間でしかない。
・1948年、「理性」と「人類同胞の精神」をうたった世界人権宣言が採択された。
・これら一連の動きは、2つの大戦が終わり、こんなことをしていたら人類はダメになるという考え方が生まれ、お互い仲良くしお互いの権利を認めていかねばならないとされた。そういう世界史的文脈の中に日本国憲法がある、それを忘れてはならない。
・日本国憲法は優れている。それは戦争放棄の9条を持っているからだ。我々はこれを地球に広めねばならない。パレスティナの思想家、故エドワード・サイードさんは日本国憲法を「人類全体の希望」と述べている。日本国憲法は確かに贈られたものとしても、日本の人民はそれを死守する責務を、世界の人民に対して負っている。
・『権利のための闘争』という本に、権利は闘わなければ守れないとある。天が与えたものではない。また、国民が法を守るのは何故かというと、それが生み出したときの苦労があるからだ、ともある。その意味で現在の憲法の危機は、日本国憲法を真に日本国民の物にするチャンスだともいえる。安倍さん程度の人が相手なのは日本人の幸せかも知れない。

Ⅱ国際人権システム
・世界人権宣言後に採択された国連の人権条約で主要なものは9個ある。専門の委員会が付随しているものだ。1つは人種差別撤廃条約、日本は30数年批准しなかった。在日朝鮮人の問題があったからだ。
・他に女性差別撤廃条約、子どもの権利条約などがある。また移住労働者家族権利条約、これは9条約のうち唯一日本が批准していないものだ。それは外国人研修の話が関わっているからだ。障害者権利条約は批准された。 ・9条約にすべてに個人通報規程があるが、日本はただの1つも批准していない。
・国連人権理事会から国連加盟国は4年に1回審査を受ける。日本はこれまで2回審査を受け、個人通報制度に入れとか、「従軍慰安婦」問題に誠実に対処せよとか、様々な勧告を受けてきた。それなりのプレッシャーがかかっているのだ。
・そろそろ人類が危なくなってきている。半世紀前の人口は35億人だった。現在は70億人を超えた。また格差が広がり、世界の大富豪85人の富が、世界の貧しい方から数えて人口の半分、35億人の富と同じになったと昨年オクスファムが発表した。現在、世界は指数関数的に変化している。人間は指数関数的変化を感覚できない。近未来の壊滅を避けるには、人権の思想に基づく社会秩序を護り発展させていく以外にない。
・そういった人類の問題を考える能力などもたず、人類から引きこもろうとする人たちが日本に多数存在する。しかし引きこもりは現実には不可能である。1947年の教育基本法は2006年に変えられた。しかし、反動的な支配層でも国連憲章やユネスコ憲章まで手出しできない。日本の民主主義は不動の味方を持っているわけで、敗北は敗北だが、その敗北を過大評価して萎縮してはいけない。日本の民主主義はタフでなければならない。そのためにも、国際的な人権システムの中に日本国憲法があることを忘れてはいけない。

Ⅲ国際人権システムVS.『私たちの道徳』
・国際人権システムの根本精神は4点ある。「理性」「個人」「人権」「人類」がそのキーワードである。詳しくいうと「人間は理性をもった存在であれ」、「人間は国家や家族から自由な個人であれ」「人権は人間なら無条件に与えられたものと知れ」「人間は人類同胞の精神をもて」というものだ。
・『私たちの道徳』の目標も4点ある。「夢」「家族」「きまり」「国」がそのキーワードである。詳しくいうと「夢・情熱を持ち、競争させられ、働かされることに疑問を持たない人間を造る」「家族・国・企業などから独立しようなどと思わない人間を造る」「自分が無条件に基本的人権を与えられた存在だと思わせない」「日本人である前に人間でありたいなどと決して思わせない」というものだ。
・「夢」について『私たちの道徳』では、成功したアスリートの話だけが語られている。理想通りにいかない現実もある、と言う話が中学校に出てくるが、理想通りにいかないのは自分の責任だと結論されている。何をすりこもうとしているのか露骨に分かる。ブラック企業の経営者が「夢」を連呼することと同じである。
・「家族」を『私たちの道徳』が強調するのは「個人」の話に関係する。日本国憲法13条の「国民は個人として尊重される」の「個人」が自民党改正草案では「人」になっている。「個人」は「家族」から独立した存在だが「人」はそうではない。日本政府はその考え方のもとに生活保護を家族に押しつけようとする。戦後、憲法13条に合わせて民法の「家族の扶養義務」を消去する話があったが、残されてしまった。昨年、生活保護法が「改正」され、保護申請者の親族を調査できるとか、保護実施を親族に通知するといった陰湿な法律になった。世界では扶養義務は親が未成年の子どもに対してのみ持つことが原則だ。自民党改正案が、憲法13条での個人を人にしているのは理念だけではなく露骨な実利がある。
・「きまり」は庶民がまもるだけのものであって、政府や企業は「きまり」を守らなくてもよいように『私たちの道徳』ではなっている。例えばバスの運転手の安全運転は運転手の自己健康管理の問題とされている。しかしなぜバスの事故が起こるかというと、企業の健康管理、過労死の問題だ。日本の過労死の背景には、日本が18あるILOの労働時間条約をひとつも批准していない現実がある。 ・国際人権システムにおける日本の二大問題点とは、国連の個人通報制度をひとつも批准していないことと、ILOの労働時間条約をこれもひとつも批准していないことだ。日本の支配層の意志がそこに現れている。しかし、民主主義を支えるような人でも、こういったことを意外と知らない。日本の民主主義を国際人権論の中で考えねばならないという意味は、こういったところにもある。
・『私たちの道徳』は基本的人権を、人間なら誰でも無条件に与えられるものなのに、義務と引き換えでなければ与えられないもののように思わせようとしている。
・『私たちの道徳』は「国」の前に「人類」があるということを認めない。自民党憲法「改正」草案で、日本国憲法が「人類」に触れた前文と97条が消されているのと同じだ。
・『私たちの道徳』とは、理性なき夢、個人なき家族、人権なききまり、人類なき国である。私たちは『私たちの道徳』に、日本の反動勢力も手を出せない国際人権論、国際人権システムを掲げ抵抗しなければならない。そのとき最後の勝利は私たちのものである。  

 

   2014年度自治体における教育予算等の調査まとまる

2014年度も、県内11市8町の教育委員会にお願いし、①2013年度決算における学校図書館図書費の自治体比較、②「子どもの貧困」対策事業として、就学援助、自治体奨学金、③学校図書館司書の配置状況、を調査しました。その比較分析は「教育政策」研究部会の中で協議しました。本サイトにはそれぞれの分析を掲載し、①については自治体比較データを掲載します。なお、②,③については、今後の事業展開に活用いただけるよう、3月末に各自治体へお返ししています。

2013年度決算における学校図書館図書費の自治体比較分析

 1.経過
(1)2012年度から「学校図書館図書整備5カ年計画」が始まり、蔵書整備で単年度で約200億円、新聞配備で5億円、加えて学校図書館担当職員(司書、常勤または非常勤、教員やボランティア含まない)配置に約150億円(週30時間勤務で2校に1名配置が可能)が、いわゆる「一般財源」として措置されています。
(2)質問項目にある基準財政需要額については、国の地方交付税教育費の積算基礎、2012年度の学校図書館図書費(2013年度公表なし)は、小学校では標準施設(学級数18)1校あたり、693,000円となっており、1学級あたりでは38,500円となる。したがって、当該市町における交付税措置額(A)は、次の算式で求められています。
A=38,500円×当該市町の学級数×補正係数 また、中学校では標準学級数は15,1校あたり981,000円となり、1学級では65,400円となります。
補正係数とは自治体の自然的・社会的状況の違いから行政経費の差を反映させるために、割り増しや割落としを行う数値です。
(3)児童生徒1人あたりの図書費については、基準額を学級定数40人で割り算すれば、小学校で963円、中学校は1635円となるが、平均的な学級人数はさらに少ないことから、教育総研では小学校1200円、中学校2000円を目安としてきました。学級人数が少ない過疎地域の学校では算出基準が学級数であることから、この数値は大きくなることが多く、予算措置も充実してきたことから、さらに見直す必要があるとの意見もあります。

 2.自治体比較分析
(1)蔵書達成率は文科省が学校図書館に整備すべき蔵書の標準として、1993年3月、自治体の学級数ごとの計算式を定めている。これによれば、小学校で18学級の場合、10,360冊、中学校で15学級の場合、10,720冊となる。県内で100%を超えている自治体は小学校で8市6町(前年度6市3町)、中学校では4市3町(前年度3市3町)、小中とも100%を達成しているのは、加賀市、小松市、白山市、羽咋市、川北町、志賀町、中能登町(前年度3市2町)となっており、増加傾向が顕著になっています。だた、一方で図書館司書配置が充実することで、廃棄が適正に行われることから達成率に影響が現れる自治体があることも見ておかねばなりません。
(2)基準財政需要額に対する決算額割合の考え方は、国が基準を示して交付税措置をするとしている以上、100%を達成することが自治体に求められるということになります。しかし、自治体にとっては、多種多様な項目に対応した交付税措置がなされているとの認識はなく、いわゆる「お金に色はついていない」ことから、自治体の判断で予算化されています。県内自治体で、小中とも100%を達成しているのは、昨年度と同様、白山市、川北町のみになっています。
(3)1人あたりの図書費は、予算配当の充実した自治体や小規模校の多い自治体、小規模自治体で高額寄付がなされた自治体などで、教育総研が設定した基準を満たしています。小中とも達成しているのは、白山市、金沢市、七尾市、輪島市、珠洲市、川北町、中能登町、能登町、穴水町(前年度5市3町)となっており、増加傾向が見られます。

    2013年度自治体別末図書館図書費 (PDF) 図書館図書費相関図(PDF)

 

2014年度「子どもの貧困対策」 県内自治体施策について

 1.経過と現状
(1)日本の子ども(18歳未満)の相対的貧困率※は、厚生労働省が2014年7月にまとめた「国民生活基礎調査」によれば、16.3%となり、過去最悪を更新した。経済協力開発機構(OECD)によれば、2010年、加盟の34カ国中、高い方から10位、一人親家庭では統計のない韓国を除けば最下位である。
※「相対的貧困率」国民一人ひとりの所得を高い順に並べ、真ん中の所得の半分(貧困線)に満たない人の割合をいう。
(2)2013年6月19日、国会で「子どもの貧困対策の推進に関する法律」(以下、貧困対策法)が全会一致で可決成立した。法の目的を「子どもの将来が、生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子どもの貧困対策に関し、基本理念を定め、対策を総合的に推進すること」としている。 第8条では、大綱として、教育の支援、生活の支援、保護者への就労支援、経済的支援などについて定めている。国際人権規約にも則り、家計の所得にかかわらず社会全体で子どもの学びを保障するためにも、現行高校授業料無償化※は堅持すべきであった。なお、この対策法は2014年1月17日に施行され、国は今後子どもの貧困率の改善や支援に関する大綱を作成、それに基づき、都道府県は子どもの貧困対策計画をつくることになるが、これは努力義務にとどまっている。
※13年12月臨時国会で法改正、所得制限基準額一世帯年収910万円以上、1/4の世帯から徴収することとなり、14年度は現在の中学校3年生から対象とされている。
(3)授業料以外でも私費負担が多額になっている。一般的な返済を必要とする貸与型奨学金は04年度に制度改変し、独立行政法人「日本学生支援機構」に所管が移行した。機構の奨学金は無利子と有利子の2種類で、返す必要のない給付型奨学金制度はない。奨学金の返済は卒業して6ヶ月後から始まり、就職の可否に関わらず、3ヶ月滞納するとブラックリストに載せられる。2012年度では33万人が返済延滞者とされ、返還金の回収強化が図られている。他方、若年層の雇用改善は進まず、返済に苦しむ若者が急増していることからも、早急に返済免除規定の復活や有利子奨学金の廃止が求められる。
(4)2005年のいわゆる「三位一体改革」において就学援助の補助金が廃止され、一般財源化され、認定基準の厳格化も進められた。また「子どもの貧困率」の増加と共に財政状況の厳しい自治体負担が大きくなる傾向もあり、自治体間にバラツキが出ていると言われている。貧困対策法の趣旨を生かすには、自治体に運用を任せるのではなく、補助金の確保、所得制限の緩和、援助費目や金額の拡充がより一層必要となる。

2.県内自治体の比較分析と課題
「いしかわ教育総研」は今年度も県内のすべて自治体に「就学援助制度」と「奨学金制度」を調査依頼し、3月6日の第4回「教育政策」研究部会で分析を行った。
(1)「就学援助」については、経年経過を見ると、概ねどの自治体も受給割合の増加傾向が見られる(小学校12/19市町、中学校13/19市町)。全児童生徒数に対し10%を超える自治体は、小学校で6市2町、平均で12.2%、中学校で6市1町、平均で14.8%となっている。中でも金沢市が小中それぞれ、17.0%、20.9%と高い受給率を示しており、「子どもの貧困」率との相関関係は否定できないものの、制度に対する保護者への周知の手立ても、大きく影響することから、改めて受給率の低い自治体の分析も必要となる。
(2)「奨学金制度」については、19市町中、何らかの制度をもつ自治体は14、その内8自治体が「給付型」の制度を取っている。「貸与型」については返済にあたり、大きな社会問題を引き起こしていることから、「給付型」への移行が求められる。また、自治体によっては応募者数と採用数に齟齬が見られることから、審査基準が制度を必要とする子どもたちへの妨げになっていないか検証する必要もある。今年度から白山市が高校生を対象に給付型の制度を始めたが、依然5自治体が未実施であり、石政連や支援議員等を通じて、制度の設立を求めていく必要がある。
(3)「奨学金制度」以外の支援施策についても継続的な調査が必要との意見が研究部会の中で指摘され、今年度調査を行ったが、報告はなかった。来年度は生活困窮者自立支援法に基づき、4月より制度の具体化が自治体に求められる。その中に「子どもの学習支援事業」があり、教育総研では金沢市と白山市でモデル事業例があると聞くが、今後、調査の課題としていきたい。  

2014年度 学校図書館司書の配置・比較分析

 1.経過
(1)学校図書館司書配置の実態調査は、「いしかわ教育総研」発足の2002年度から実施しています。当時の年報によれば、「県内8市の実態調査を行ったが、松任市(現白山市)、加賀市、小松市に配置があるが、正規雇用職員は一部で、全校配置も少ない。その中で松任市は98年に市内13の小中学校すべてに配置がなされ、02年からは一部残っていた臨時雇用を解消し、すべてを正規雇用職員とする決定を行った。こうした配置は全国的にもきわめて異例と言われ、多くの視察も受け入れている。」との報告がなされています。
(2)96年6月に学校図書館法の一部改正がなされ、03年4月から12学級以上すべての公立学校に司書教諭が発令されることとなりました。しかし、同法2条2項「司書教諭は教諭を持って充てる」となっており、いわゆる「充て」司書教諭が発令されています。そのため、学校では学級担任等の通常勤務との兼務となり、図書館業務には手が回らない実態は解消されていません。
(3)14年6月に再び、「学校図書館法の一部を改正する法律」が成立し、学校図書館司書が法的に位置づけられました。全国平均で半数の学校にしか司書配置がなされていない中で、この法改正は学校現場の要請が結実したものであり、運動の成果とされますが、その配置は自治体の努力義務に止まり、国が配置基準を定めるなど、予算措置を講ずるまでには至っていません。

2.今年度の状況と課題
(1)教育総研が調査を始めて13年、昨年度は配置のない自治体は1つ(宝立志水町)のみとなりましたが、10月に配置があり、これで県内すべての市町での配置が実現しました。この間、教育総研のとりくみが自治体議会でも取り上げられ、マスコミ報道もされてきたことの成果と自負しています。また、昨年比で大きく採用増がなされた自治体は能美市(正規1名、臨時9名)と金沢市(嘱託8名)で、能美市は一気に全校配置となり、金沢市は3校担当者を廃し、すべて2校担当となりました。
(2)司書の雇用状況も継続して調査していますが、依然、大多数が非正規職員で短時間勤務、有期雇用であり、一部に無資格者の雇用も見られます。一方で正規職員が雇用されているのは、能美市、白山市、川北町、津幡町であり、1人が1校を担当(専任)している自治体は小松市、能美市、白山市、野々市市、川北町となっています。中でも白山市は約半数で正規雇用が継続されており評価されますが、一方で同じフルタイム勤務でも待遇に格差が生じている課題が指摘されています。
(3)司書が配置されることで、学校図書館をめぐる環境が劇的に変わります。教育総研で一昨年に白山市の東明小学校の学校図書館を視察しました(12年度年報、HP参照)。その際、司書の創意工夫が掲示物や図書棚の配置など環境整備に生かされており、司書教諭と連携して図書館教育を担っているとの報告を受けています。また、本の貸出数も大幅に増加することの成果が報告されていることから、教育総研でも改めて調査できないか、検討を行うこととしています。

 
 道徳の教科化に危機感!    
部会でブックレットを発刊
道徳批判本表紙(  

・はじめに
 道徳は修身の、06教育基本法は教育勅語の復活である
  部会長 石川多加子(金沢大学教員)   石川(PDF
・第1部 総論
 『私たちの道徳』批判
 『私たちの道徳』=「理性」なき「夢」、「人権」なき「きまり」、「人類」なき「国」
  
部会長代行 半沢英一(金沢大学教員) 半沢(PDF)
 人に指示-残りの指3本は自分に向く -排外的ナショナリズムと自己責任を説く書の批判-  
  所長  田村光彰(元北陸大学教員) 田村(PDF)
 『私たちの道徳』(小学校5.6年/中学校)をどう扱うか
   研究員 塚本久夫(元高等学校教員) 塚本(PDF)
 事実に目を向けず「きれいごと」に終始
  事務局長 古河尚訓(元市議会議員)  古河(PDF)
・第2部 授業案
 「私たちの道徳」に対して 対峙しつつも批判的活用を!-「法やきまり」の授業-  
  事務局員 山添和良(市議会議員)  山添(PDF)
 成功者ばかりの「勤勉・努力」に光を当てない!
 「努力したこと」(その過程)に光を当てたい!
  研究員 田村泰子(元小学校教員)  田村泰子(PDF)
 「自分で考え実行し責任を持つ」の「責任」とはどういうこと・・
   研究員 橘 広行(中学校教員)  橘(PDF)    


「全国学力調査」記者会見で廃止を求め「声明」

DSCN3821112月3日、「教育政策」部会として、記者会見を行い、総研として「声明」を公表しました。テーマは全国学力学習状況調査(以下、全国学テ)です。教育総研からは部会長の石川多加子(金沢大学)さん、事務局からは古河、竹田が参加、この日、県議会開催や総選挙運動期間と重なり、参加は新聞2社と、例年より少なくなりました。この時期の声明発表は県教委が12月9日を中心に「評価問題」なる事前テストを県内一斉に行う予定をしていることへの抗議の意も含めています。 1412 全国学力調査反対声明(PDF) 今回の声明の背景には、昨年11月に文科省が結果の公表をそれぞれの地教委判断に任せることしたことで、石川県教委も今年10月に市町村別の平均正答率を公表、県内市町の教育委員会でも学校別の成績公表を表明する事態があります。声明ではこうした中で、「学校全体が学力テスト体制下に追い込まれ、子ども・保護者・教職員には余裕がなくなり、孤立を深めている」と指摘しました。また県教組が行った学校現場の実態調査によれば、「4月のテストまではプリント学習に追われ、授業ができない」「過去問の練習のため授業の進度が遅れている」などの実態が報告されており、看過できない状況にあります。 いしかわ教育総研として、改めて、目指すべき「学力」とは、「主権者としての力であり、このテスト至上主義では、主体的に判断・決定・行動する主権者育成は望むべくもなく、国・支配者にとって好都合な統治の客体としての国民が量産されるばかりだ」と指摘しました。 なお、この会見を報道したのは、12月4日の北陸中日新聞のみだったことは残念でした。  

 

   2014公開研究講座 
ゆたかな学びを否定する「安倍教育改革」~「“日本型”市民」像をめぐって~   
本間正吾
さん(神奈川県高等学校教育会館特別研究員)

147本間写真37月5日(土)県教組全支部執行委員学習会の場をお借りし、「教育政策部会」主催、公開研究講座を開催しました。 本間さんは、安倍教育改革が企図する「“日本型”市民」像、それを教育の場に持ち込む道徳教育といかに対抗するのか、今後、わたしたちに問われていると指摘されました。

「“日本型”市民」とは、欧米各国が長い歴史の中で形成してきた市民とは違い、近代の始まりとともに作られたものと言われる。近代日本は、 “日本型”市民(都市、富の集積)と前 “日本型”市民(農村、貧の集積)であった。戦後は “日本型”市民(エリート層)と擬似 “日本型”市民(ノンエリート層)となった。そしていずれのときも立身出世主義があった。現在の新 “日本型”市民 は、グローバルエリートとグローバルワーカーに分かれている。グローバルワーカー層が、兵隊や道具として期待され、これが道徳教育や教育改革の対象となっている。 今、学校現場には「わたしたちの道徳」という副読本が文科省から配布されている。そこに二宮尊徳や野口英世がヒーローとして登場している。共通するのは立身出世の物語であり、「成功者は偉い」という刷り込みがなされようとしている。また日本の伝統を「サムライの国」と規定し、明治維新も武士の自己犠牲で成し遂げられたと徹底しようとしている。 敗戦とともに、「百姓・町人の文化」=村組織で培われた共同主義・自治主義・地方分権そして平和主義に根ざした文化がよみがえればよかった。まさしくこの「平和主義こそが日本の伝統」なのだ。

講演要旨は以下を参照して下さい。   本間正吾 講演要旨(PDF)

 

 
  現場教職員の皆さんへ    
 教育を蔑ろに、安倍「改革」と私たちの課題
 「教育政策」部会長 石川多加子さん

[20140307]1311 koukyouiku4第2次安倍政権の発足から1年余を経過し、日本国憲法がよって立つ基本原理—平和主義・人権尊重・国民主権—は、実質的にも形式的にも、いよいよ侵害されつつある。教育の分野においては、高校授業料無償化の所得制限導入、道徳の教科化、国家戦略特区による公設民営学校の解禁、教育委員会制度改編、教科書検定基準改定等、教育を受ける権利と教育の自由を蔑ろにした「改革」策が矢継ぎ早に実行されようとしている。危機的状況にあって、いかに豊かな学びを守り得るかは、私たちに課せられた重要かつ切迫する努めである。

就学援助と奨学金に関する研究は、今年度かなり発展してきたところである。2014年4月からの消費税増税が貧困を拡大させる恐れがある中、高校授業料無償化所得制限が開始する。アベノミクスの陰で、世帯年収GDP(国内総生産)は市場予想を割り込み、平均世帯年収は1994年をピークに減少を続けている。就学援助及び奨学金はいずれも必要性を増しており、今後はより具体的な分析を試み、実態を明らかにすると共に、給付型奨学金の拡充を求めていきたい。関連して、引続き学校統廃合問題に取り組んでいく。経済的格差と地域的要因が重なって教育の機会均等がますます遠ざかる現状は、今や全国に蔓延している。他県・市町村の場合との比較検討も有意義であろう。 他方、学力テストに関してであるが、引続き廃止に向けて研究を重ねていきたい。 2013年度の「全国学力・学習状況調査」は「きめ細かい調査」と称して悉皆形式で実施され、併せて経年変化等を調べる追加調査や保護者を対象とする調査も行われた。のみならず、文部科学省は2014年度より、これまで各学校に任せてきた学校別成績公表を、市区町村教育委員会の判断によって決定することとした。県内でも既に、小松市及び輪島市が公表を決めている。一面的な学力観に基づく競争主義は、子どもの学習権を損ない、教職員・保護者の教育の自由を損なう。結果公表の中止を求めていく必要があることは言うまでもない。  

 

石川県自治体における2013年度教育予算等の調査結果まとまる

県内11市8町の教育委員会にお願いし、①就学援助、自治体奨学金 ②2012年度決算における学校図書館図書費の自治体比較 ③学校図書館司書の県内配置状況 を集約しました。その比較分析は、2月26日の第4回「教育政策」研究部会で報告し協議しました。本サイトには②について、「比較分析」を掲載し、資料として、各自治体データ、基準財政需要額に対する措置率と1人当たりの図書費の相関図も掲載します。 なお、①と③については、比較分析のみを掲載し、集約したデータについては各自治体にお返し致します。

2012年度決算における学校図書館図書費の自治体比較分析

1.経過
(1)いしかわ教育総研が経年調査を行ってきた学校図書館図書費の自治体調査は、今年度も9月末を集約目途に要請してきた。しかし、全ての自治体からの回答は1月となり、未記入項目の再確認作業もあり、1月末に県内11市8町の集計が行えることとなった。
(2)自治体の未記入もしくは取り違えの多くは、質問項目にある基準財政需要額である。国の地方交付税教育費の積算基礎によれば、2012年度の学校図書館図書費は、小学校では標準施設(学級数18)1校あたり、693,000円となっており、1学級あたりでは38,500円となる。したがって、当該市町における交付税措置額(A)は、次の算式で求められている。  A=38,500円×当該市町の学級数×補正係数 また、中学校では標準学級数は15,1校あたり981,000円となり、1学級では65,400円となる。補正係数とは自治体の自然的・社会的状況の違いから行政経費の差を反映させるために、割り増しや割落としを行う数値である。
(3)児童生徒1人あたりの図書費については、基準額を学級定数40人で割り算すれば、小学校で963円、中学校は1635円となるが、平均的な学級人数はさらに少ないことから、教育総研では小学校1200円、中学校2000円を目安としてきた。学級人数が少ない過疎地域の学校では算出基準が学級数であることから、この数値は大きくなることが多い。

 2.自治体比較分析
(1)蔵書達成率は文科省が学校図書館に整備すべき蔵書の標準として、1993年3月、自治体の学級数ごとの計算式が定めている。これによれば、小学校で18学級の場合、10,360冊、中学校で15学級の場合、10,720冊となる。県内で100%を超えている自治体は小学校で6市3町、中学校では3市3町、小中とも100%を達成しているのは、小松市、白山市、羽咋市、川北町、中能登町である。だた、新たに図書館司書が配置され、廃棄が適正に行われたことで達成率に影響が現れた自治体もある。
(2)基準財政需要額に対する決算額割合の考え方は、国が基準を示して交付税措置をするとしている以上、100%を達成することが自治体に求められるということである。しかし、自治体にとっては、多種多様な項目に対応した交付税措置がなされているとの認識はなく、いわゆる「お金に色はついていない」ことから、自治体の判断で予算化されている。県内自治体で、小中とも100%を達成しているのは、白山市、川北町のみである。
(3)1人あたりの図書費は、予算配当の充実した自治体や小規模校の多い自治体、小規模自治体で高額寄付がなされた自治体などで、教育総研が設定した基準を満たしている。小中とも達成しているのは、加賀市、白山市、金沢市、輪島市、珠洲市、川北町、中能登町、穴水町の5市3町であった。

(資料1 PDF)   2012 学校図書館図書費自治体別
(資料2 PDF)  2012 図書館図書費相関図

 

2013年度「子どもの貧困対策」 県内自治体施策について

 1.経過
(1)日本の子ども(17歳以下)の相対的貧困率※は2009年で15.7%(政府調べ)となっている。これは、経済協力開発機構(OECD)加盟の37カ国中、高い方から11位、一人親家庭では2番目である。
※「相対的貧困率」国民一人ひとりの所得を高い順に並べ、真ん中の所得の半分(貧困線)に満たない人の割合をいう。
(2)2013年6月19日、国会で「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が全会一致で可決成立した。法の目的を「子どもの将来が、生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子どもの貧困対策に関し、基本理念を定め、対策を総合的に推進すること」としている。
(3)第8条では、大綱として、教育の支援、生活の支援、保護者への就労支援、経済的支援などについて定めている。国際人権規約にも則り、家計の所得にかかわらず社会全体で子どもの学びを保障するためにも、現行高校授業料無償化※は堅持すべきであった。なお、この対策法は2014年1月17日に施行され、国は今後子どもの貧困率の改善や支援に関する大綱を作成、それに基づき、都道府県は子どもの貧困対策計画をつくることになるが、これは努力義務にとどまるようである。
※13年12月臨時国会で法改正、所得制限基準額一世帯年収910万円以上、1/4の世帯から徴収することとなり、14年度は現在の中学校3年生から対象とされる。
(4)授業料以外でも私費負担が多額になっている。一般的な返済を必要とする貸与型奨学金は04年度に制度改変し、日本学生支援機構に所管が移行した。それに伴い、「金融事業化」が進み、返還金の回収強化が図られている。他方、若年層の雇用改善は進まず、返済に苦しむ若者が急増していることからも、早急に給付型の奨学金制度の創設が求められる。
(5)「三位一体改革」において就学援助の補助金が廃止され、一般財源化されている。そのため、自治体間にバラツキが出ていると言われており、今回の法制定を機に、自治体に任せるのではなく、補助金の確保、所得制限の緩和、援助費目や金額の拡充が必要となる。

 2.県内状況の比較分析 (1)「いしかわ教育総研」は今年度も県内のすべて自治体に「就学援助制度」と「奨学金制度」を調査依頼し、11月28日の「教育改革」研究部会で中間分析を行った。「就学援助」については、経年経過を見ると、概ねどの自治体も受給割合の増加傾向が見られ、全児童生徒数に対し、10%を超える自治体は、小学校で3市1町、平均で11.8%、中学校で6市2町、平均で14.4%となっている。中でも金沢市が小中それぞれ、17.0%、21.1%と高い受給率を示しており、「子どもの貧困」率との相関関係は否定できないが、一方では制度に対する保護者への周知の手立ても、大きく影響することから、受給率の低い自治体の分析もさらに必要となる。 (2)「奨学金制度」については、19市町中、何らかの制度をもつ自治体は13、また9自治体が「給付型」の制度を取っている。「貸与型」については返済にあたり、大きな社会問題を引き起こしていることから、「給付型」への移行が求められる。また、給付要件が制度を必要とする子どもたちへの妨げになっていないか検証する必要もある。他方6自治体が制度を持っていないことから、議会等を通じて、制度の設立を求めていく必要がある。なお、「奨学金制度」以外の支援施策についても継続的な調査が必要との意見が研究部会の中で指摘されている。


 2013年度の学校図書館司書の配置 比較分析

1.       経過
学校図書館司書配置の実態調査は、「いしかわ教育総研」発足の2002年度から実施している。当時の年報によれば、「県内8市の実態調査を行ったが、松任市(現白山市)、加賀市、小松市に配置があるが、正規雇用職員は一部で、全校配置も少ない。その中で松任市は98年に市内13の小中学校すべてに配置がなされ、02年からは一部残っていた臨時雇用を解消し、すべてを正規雇用職員とする決定を行った。こうした配置は全国的にもきわめて異例と言われ、多くの視察も受け入れている。」との報告がなされている。なお、96年6月に学校図書館法の一部改正がなされ、03年4月から12学級以上すべての公立学校に司書教諭が発令されることとなった。しかし、同法2条2項「司書教諭は教諭を持って充てる」となっており、いわゆる「充て」司書教諭が発令され、今日も状況は変わっていない。

2.       今年度の状況
(1)教育総研が調査を始めて12年になり、配置のない自治体は1つ(宝立志水町)のみとなった。総研のとりくみが自治体議会に取り上げられ、マスコミ報道もされてきたことの成果と自負している。ただ、司書の雇用状況は大多数が非正規職員で短時間勤務、有期雇用であり、一部に無資格者の雇用も見られる。一方で正規職員が雇用されているのは、白山市、川北町、津幡町であり、1人が1校を担当(専任)している自治体は小松市、白山市、川北町となっている。
(2)県内でも配置が遅れていた金沢市が11年度より雇用を始め、12年度で31人、13年度(6月より)40人の採用を行っている。10月30日の朝日新聞によれば、本の貸出数は増加し、1人あたりの年間貸出数は小学校で45.3冊(前年比16冊増、県平均78冊)、中学校で6.6冊(前年比2.5冊増、県平均15.9冊)となっているという。
(3)昨年度12年7月に、教育総研は白山市の東明小学校の学校図書館を視察した(12年度年報、HP参照)。そこでは、司書(正規)の創意工夫が掲示物や図書棚の配置など環境整備に生かされており、司書教諭と連携して図書館教育を担っているとの学校長の報告も受けた。改めて今後の課題として、正規雇用・専任化、そして司書教諭の補佐から、図書館教育の役割を担う専任司書の配置が全県に拡大することが重要である。


全国学力調査に憂慮、「教育政策」部会で記者会見

12月4日、文教記者室で新聞3社とテレビ局2社が参加し、記者会見を行いました。 今回は下村文科大臣が「全国学力学習状況調査」の学校別結果を市町村教委が公表することを認める発言と、県教委が12月10日に実施する予定の「評価問題」なる事実上の「事前練習」など、一連の事態が過度の競争を生み出していることに警鐘を鳴らしたものでした。 「声明」はPDFで紹介します。               1312 全国学力調査「声明」PDF 1312 総研記者レク5  

 

2013年度「教育政策」部会 公開研究講座
「主権者教育としての憲法教育を」 
講演・石川多加子さん(金沢大学准教授) [20130724]136ishikawa3

6月29日、教育総研「教育政策」部会が主催する公開研究講座が開催されました。この日は、県教組の全支部執行委員が一堂に会する学習の場に、部会長である石川多加子・金沢大学准教授が講演に立ちました。参加者は全体で190名余、その内、総研関係者・市民が約20名参加しました。
石川さん講演要旨(PDF)

第1研究「教育政策」部会の研究活動報告
2012年度の経過と総括(PDF:108KB)
「教育政策」部会長  石川多加子
金沢大学准教授(人間社会研究域 学校教育系) 日本国憲法では、教育を受ける権利(26条)、教育の機会均等(14条)が定められていますが、実現には程遠い実際があります。 部会では、学校図書の整備、奨学金、学校統廃合、学力テスト等に関する現状と課題について議論を進めることで、学習権の充足、教育の自由保障を目指していきたいと考えています。第2次安倍政権発足により、改憲に向けた動きが活発になっています。教え子を再び戦場に送らないために、組合員の皆さんには、憲法学習・教育に積極的に取り組んで貰いたいと切に望んでいます。方法や教材等を具体的に提示していくのも、重要な急務であると考えています。  

 
石川県11市8町小中学校教育環境の状況と提言【PDF:748KB】
~学校図書館・就学援助・奨学金について~   
  事務局員 細野 祐治  
「教育政策」部会による市・町教委視察から【PDF:718KB】 sityokyoi2012a

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