環境教育

2019年度 内灘町でF.W.公開研究講座

内灘砂丘は白山がもたらした

 8月26日、好天に恵まれ、環境教育交流集会として、午前中フィールドワーク(F.W.)、午後から公開研究講座が開催されました。

 今年のテーマは「内灘から津幡~大地の成り立ちとくらし~」です。F.W.は講師の青木賢人部会長の案内で、参加者20名が内灘町「ほのぼの湯」から出発、広大な砂丘から河北潟を展望したあと、砂丘の切り通しや海岸線をめぐり、6000年前の縄文時代から弥生時代にかけ、海進と海退を繰り返す中で海岸線が移動し、風により砂丘が形成されることから、砂の粒がそろっていることを体感しました。引き続き、河北潟周辺をめぐり、「干拓」されたことで、残された潟の水面より標高が低くなっている(0m以下)ことや津幡・井上庄へ移動し、僅かな微高地に集落ができたことを現地学習しました。

 公開講座は「ほのぼの湯」研修室に教育総研研究員と地元教職員28名が参加しました。講師はF.W.と同じく青木部会長、まずは砂丘の成り立ち、石川県は近隣の富山、福井と比べても格段に大きな砂丘が発達している。砂丘が大きくなるには、「たくさんの砂があること」「たくさんの砂が吹き上げられること」を挙げ、砂の供給源が白山であり、海岸地形が遠浅になっていることが要因とされました。河北潟の成り立ちも近隣の断層地形(邑智・森本断層)に挟まれる砂丘が形成されることで、遠浅の海が仕切られるように河北潟ができたと説明されました。つまり、砂丘は内灘から金沢、白山市方面に伸びていったとのことです。今干拓地が広大な牧草地として活用されたり、砂丘が全国有数のスイカの産地となっている、身近な産業・生活を知るためには、身近な環境と結びつけることで学習が定着するとまとめられました。

 参加者からは、青木部会長の的確な解説に、「ぜひ校外学習で子どもたちに教えたい」「環境や防災が、自分たちの生活とかけ離れたものではなく、身近でつながりの中にあることを気づかされた」などの感想が寄せられています。

 

2018年度 小松市でF.W.と公開研究講座

 小松の町は梯川が作った

 8月17日、環境教育部会主催のフィールドワーク(FW)と公開研究講座が小松市を会場に開催されました。この夏は連日の猛暑日が続いていましたが、この日は一転して涼しさを感ずる日となり、午前中のFWは青木部会長の案内で28名が参加しました。
 まずは小松の市街地形成に深く関わる梯川の河川改修事業の現場である小松天満宮へ。現地には国交省からも説明に来ていただきました。梯川は勾配が少なく、この付近は河川幅が狭くなっており、たびたび洪水の被害に見舞われてきたところです。昨年完成した事業は河川に隣接するこの国指定文化財を移転させることなく、輪中の形で分水路を作ったことに特徴があります。文化財の保全か事業優先かの選択をしたことになります。青木部会長曰く、高度成長期ならこの選択はしなかっただろうとのことです。
 小松市街地は旧小松城を中心に形成されています。かつて梯川はこの付近から90度進路を変えており、その2辺を活用、海に浮かぶ島のように水路を整備した「水城」となっていました。FWでは広大だった敷地とかつての堀跡が今は住宅地となっている一帯を歩き、殿町、古城町、丸内町、浮城町、芦田町など町名や葭島神社、芦城公園の名からも当時の環境が想像できるようでした。

 午後は小松市文化会館に会場を移し、公開講座を開催、小松支部を中心とした組合員に教育総研関係者を加え、50名が参加しました。
 まずは昨年度の全国教研に参加した、河北支部・村上直哉さんから「給食0へのこだわり~食を通して健全育成をめざす~」とのテーマで報告を頂きました。村上さんは、子どもたちの食生活の乱れや健康問題が深刻化する中で学校給食や食育の果たす役割の大きさを痛感してきた。その中で教職員の理解と協力を得て、全校的に食べることの意義を伝え、配膳まで工夫して、結果的に残食0を実現しているとのことでした。
 青木部会長からは午前中のFWを受ける形で、「小松の街ってこんなところ~小松の環境と防災を考える~」とのテーマで講演を頂きました。冒頭で大川小の控訴審判決を取り上げ、学校には独自に学校・校区の地理的環境を独自に調査・分析する責任が求められ、行政のハザードマップを上回る危険性も認知すべきとされている。この7月の西日本豪雨、倉敷市真備町が大きな被害を受けたが、想定されたハザードマップの範囲内だった。しかし、被害の拡大は地理的環境の理解の周知が進んでいなかったからと言われる。小松市もよく似た地形でハザードマップにはほぼ市街地全域に洪水被害想定が示されている。旧小松城を中心とした当時の町並みは浸水想定地域を避けて微高地の砂丘に形成されていた。現在はかつての低湿地であり、水田として利用されていた所が住宅地として開発されている。潜在的に水害リスクが高いことを理解することが必要である。子どもたちにも地域の環境理解を通した防災対策・災害対応が必要とまとめられました。

 

2017年度 環境教育部会提言

「身近な環境を理解することが防災教育につながります」

 部会長 青木賢人(金沢大学)

 2015年度の提言では「身近な環境から学ぶ~ローカルとグローバルを行き来する~」として身近な環境に注目して環境教育を行う勧めを,2016年度の提言では「環境教育を通じて子供たちの安心安全を」として環境教育と防災教育の連携の勧めをさせていただきました.講演会やフィールドワークでも,この二つの観点を重視したものを実施させていただき,参加された皆さんには具体的な事例をもとに,その方法論をお伝え出来たのではないかと思っています.
 また,今年2017年度も7月に福岡県・大分県に甚大な被害を与えた北部九州豪雨災害をはじめ、石川県でも8月の台風5号では県内各地で降水量の記録を更新したほか,湯涌温泉に続く道路などで土砂災害が発生するなどの被害があったことも記憶に新しいと思います.1月に入ってからは草津白根山の噴火災害も発生しました.また,今年4月には,国土交通省から手取川,梯川における1000年に1度の確率の洪水に関する浸水想定も発表されました.石川の子どもたち(そして未来の大人たち)が自然災害で命を落とさないようにするためにも、教員自身が常に新しい情報に対する感度を高く持ち、災害を「自分ごと」として感じることができるようにしておく必要があると思います.
 しかし,その一方で,自分の学校に適応するためには,どこから手を付けていいかわからないという声も寄せられました.そこで,今年度の提言では,過去二年間の提言を補完する意味で,地域の災害やその背景となる環境を理解するためのさまざまなデータに関する情報提供をしたいと思います.これらの情報を参考に,各校の防災計画の見直しや防災教育を進めていただければと思います.

【現在の地域の自然の特徴を把握する】
<土地条件図・治水地形分類図>
https://maps.gsi.go.jp/
土地の表層の地質条件や地形の条件が記載された地図です.地盤の安定性・軟弱性,水害に会いやすい場所などがわかります.上記のサイトから「地理院地図」を表示し,左上の「情報」の小ウィンドウの「全て」→「主題図」をクリックして,「土地条件図」または「治水地形分類図」を選んでください.金沢周辺は土地条件図が,白山市・小松市周辺は治水地形分類図が用意されています.

<旧版地形図・空中写真>
http://mapps.gsi.go.jp/maplibSearch.do#1
昔の地図や,飛行機から撮影した昔の写真です.旧版地形図は明治時代から,空中写真は第二次世界大戦後からのものを閲覧することができます.上記のサイトを開くと日本地図が示されます.左側の条件を設定するウィンドウで各種の条件を設定し,地形図や写真を見たい地域の地図を表示すると,データが存在する場所に点が表示されます.点をクリックするとデータを閲覧することができます.

【地域の災害の可能性を把握する】
<石川県・防災ホームページ>
http://www.pref.ishikawa.lg.jp/kurashi/anzen/bosai/index.html
石川県からのさまざまな防災に関連した情報が発信されているページです.石川県のホームページから,「くらし・教育・環境」→「安全・安心」→「防災」でたどり着きます.

<石川県地域防災計画>
http://www.pref.ishikawa.lg.jp/bousai/bousai_g/bousaikeikaku/index.html
石川県の最も基本的な防災計画です.災害発生前,発生後などに,県がどのような方針で対応を行うのかが示されています.この県の地域防災計画に対応して,各市町の地域防災計画が定められています.学校所在地の市町の地域防災計画も参照してください.学校に求められている役割も記載されています.

【地震・津波関連】
<都市圏活断層図> 
https://maps.gsi.go.jp/
活断層の通っている位置を把握できます.上記のサイトから「地理院地図」を表示し,左上の「情報」をクリックして「活断層図」を表示させてください.さらに「都市圏活断層図」を選択して,地図を拡大していくと断層が表示されるようになります.石川県では「森本富樫断層帯」と「邑知潟断層帯」が分布するとともに,富山県に分布する「砺波平野断層帯」も地震を起こすと石川県に被害をもたらします.解説をクリックすると詳しい利用の仕方がわかります.

<地震ハザードステーション> 
http://www.j-shis.bosai.go.jp/
地震が発生した時の震度分布の予測を把握できます.スタートをクリックして地図(J-SHISマップ)を表示させ,左側の「主要活断層帯」にチェックを入れ,「想定地震地図」のタブを開いてください.地図上に表示されている赤枠が活断層です.想定震度を知りたい活断層をクリックすると地図が表示されます.表示される想定震度は,あくまでも「想定」です.実際の震度は想定よりも少し大きくなるかもしれないことに留意し,防災計画を立案する際には,震度階を1つ上で考えておくほうが望ましいです.

<石川県津波浸水想定区域図> 
http://www.pref.ishikawa.jp/bousai/tsunami/
石川県内の津波想定のうち,最大浸水深と浸水開始時間の分布が示されています.沿岸の各市町の図が用意されています.

<気象庁震度階級の解説> 
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/jma-shindo-kaisetsu-pub.pdf
震度ごとの,人や建物,インフラなどに対する被害の現れ方が解説されています.地震ハザードステーションで調べた震度で,校舎や周辺の地域がどのような被害を受けるのかを想定する際に参照してください.

<液状化しやすさマップ> 
http://www.hrr.mlit.go.jp/ekijoka/map/next.html
地質条件に基づいて,地震の際に液状化が起きやすいところを示しています.液状化が発生した地域では震災後の移動が困難になり,負傷者の移送や物資の輸送が困難になることを想定しておく必要があります.

<地震調査研究推進本部 森本・富樫断層帯> 
http://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_katsudanso/f057_morimoto_togashi/
森本富樫断層帯に関する様々な情報が掲載されています.特に,将来の地震発生確率に関する解説が掲載されていますので,注目して読んでいただければと思います.

【水害・土砂災害関連】
<気象庁 高解像度降水ナウキャスト>
https://www.jma.go.jp/jp/highresorad/
降水の現況と将来予測(1時間先)について,250m四方のメッシュサイズで表示しています.ピンポイントで降水状況が把握できるので,児童・生徒の屋外での行動に際して活用してもらえればと思います.同じ画面で,雷の状況も把握できます.併せて活用してください.

<石川県河川総合情報システム> 
http://kasen.pref.ishikawa.jp/
石川県の河川の水位についてリアルタイムに知ることができます.水害時に校舎や校区内で浸水が想定されている学校では,上記の高解像度降水ナウキャストと組み合わせて,大雨が降っている際の児童・生徒の下校判断に活用していただければと思います.

<気象庁 土砂災害警戒判定メッシュ情報>
https://www.jma.go.jp/jp/doshamesh/
土砂災害の危険性が高まっていることを示す土砂災害警戒情報の発令状況について,5km四方のメッシュで示しています.土砂災害警戒区域を示したハザードマップと組み合わせることで,早めの避難や対応を考えることが可能となります.

<石川県土砂災害情報システム SABOアイ> 
http://sabo.pref.ishikawa.jp/
土砂災害警戒情報の発表状況や土砂災害の危険度の現況を知ることができるほか,「土砂災害情報マップ」を利用することで,土砂災害警戒区域の分布をみることができます.土砂災害警戒区域に含まれている範囲では,気象庁から土砂災害警戒情報が発令された際に,早めの避難や対応が必要になります.

<洪水浸水想定区域(手取川・梯川)> 
http://www.hrr.mlit.go.jp/kanazawa/mb3_bousai/shinsui/
手取川と梯川について,最大規模(1000年に1度程度)の浸水の際の浸水想定区域,浸水継続時間,最短到達時間想定図が掲載されています.

【火山災害関係】
<白山火山防災マップ>
http://www.pref.ishikawa.lg.jp/bousai/bousai_g/hakusan_kazan/map.html
白山は,将来的に噴火することが予想されている活火山です.噴火によって,溶岩流,火砕流,噴石,融雪型火山泥流など,さまざまな影響が及ぶと考えられています.また,噴火警戒レベルの上昇に伴い,入山の規制や交通規制などが行われます.こうした情報を地図として見られる白山の噴火ハザードマップです.

<気象庁 火山活動の現況(白山)>
http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/activity_info/313.html
火山の活動状況に関する情報は,気象庁のページに掲載されています.2月21日現在の白山は,噴火警戒レベルが1(活火山であることに留意)の段階であることが確認できます.また,噴火警戒レベルが上昇していなくても,通常とは異なった活動が発生すると,このページに説明が掲載されます.最近ではH29年12月6日に火山性地震が急増したい際に情報が公表されました.
「脅しの防災教育」を越えて「共生の防災教育」へ
日本列島は、その地球科学的な立地条件から日常的に自然災害が起こることが避けられない土地です。日本に住み続ける限り,自然を理解し自然災害と付き合うことは,必要最低限の「生きる力」です。一方で、災害をもたらす自然は、人間を生かし社会に資源とエネルギーという恵みをもたらすものでもあります。言い換えれば、災害の原因となる自然現象があるからこそ、私たち人間はこの大地に生きることができるのです。この国に生き住み続けるためには、自然を恐れるのではなく、自然を理解し、自然と共に生きることが不可欠です。防災教育を防災教育だけにとどめるのではなく、環境教育や地域学習と連携させることで、より広く自然を理解し、子どもたちの生きる力を育むことができるはずです。理科・社会など複数の科目にまたがる領域であり、先生方の教材開発やカリキュラム設計に掛かってきます。ぜひ、継続的に災害や環境に係る学習を続けていただければと思っています。

 

2017年度 能登地区でフィールドワーク・公開研究講座

能登半島は地震が作り出した隆起地形

 

環境教育部会が主催する公開研究講座が、8月17日志賀町富来活性化センターで開催されました。
 午後の講演会に先立ち、午前中は現地フィールドワークを部会長・青木賢人さんの案内で実施しました。2007年3月の能登半島地震から10年が経過、改めて検証することが1つのテーマです。輪島市門前町赤神地区の海岸では、海藻を採取するための「藻場」が、あの地震(M6.9,最大震度6強)で、30cmほど隆起して使えなくなりました。今はようやく再建されている現場を確認しました。青木さんによれば、能登は大きな地震に見舞われないとの認識が広がっていたが、能登の丘陵地はこうした地震活動で形成されてきたもので、推定12~13万年かけて形成されたものとのことでした。2つめの視察地は富来町立富来小学校の放射線防護施設です。教室3個分くらいの小体育館状のスペースを増築、隣接の2教室も取り込んでの施設で、2016年3月に完成、総工費1億6千万余とのことです。放射線対策として窓には鉛入りのカーテン、施設に放射性物質が入り込まないよう、気圧を高める仕組みが設置されています。この施設は、収容人数150人とし、近隣の広域避難が困難な要介護者と付添人が3日間生活できることを想定しているとのことでした。国の事業とは言え、膨大な経費をかけねばならない原発とは何なのか、改めて考えさせられました。

 午後は講演会、県教組組合員・教育総研関係者40が参加しました。まずは河北支部・宮谷早苗さんから、昨年度県教研レポートを報告頂きました。テーマは「いのち・環境を大切にする子を育てる」。4年生が地域の大人の力を借り、水田の水路に入り生き物調査をする体験や下水道処理施設見学の体験を通し、地域の自然環境とそこに生活する生物へのまなざしが変わってくることが報告されました。教育総研が提唱する地域の環境を知ることから始まる環境教育を実践されています。  青木部会長の講演テーマは「能登半島の環境と防災~能登半島の地震と地すべり~」です。冒頭に地域の環境を理解することの意義に触れ、「環境教育のポジティブな面と防災教育のネガティブな面を一体的に理解することが大切」と指摘。能登半島の地形が比較的活発な隆起を繰り返してできていることが紹介されました。また能登半島地震のメカニズムが紹介され、活断層の上には建造物を作らせないとする法規制は日本では原発とダムしか対象としていない。(病院や学校、避難所となる公共施設は対象外)志賀原発は今、その活断層の存在をめぐって係争中だが、まさに原発立地場所が過去の地震による隆起地形の上にあり、近隣活断層に連動する断層が直下に存在するとの指摘がなされていることも紹介されました。環境教育部会では、今後、この公開講座を起点に、能登地区の学校防災計画を取り寄せ、検討を進めることとしています。

 

2016年度 防災教育で「提言」

2016年度の環境教育研究部会では、身近な環境に視点を当てたテーマを設定し、中でも今年度は熊本や鳥取で大規模な地震が発生したことから、「防災教育」を焦点化してきました。
最終研究部会で部会長起案の「提言」を確認しました。「提言」では、冒頭に石巻市立大川小学校の判決(2016.10.26)では、「想定を超える大きな災害であっても、児童生徒の避難誘導に教職員の責任がある」とされたことを取り上げています。また、各学校がおかれた環境を理解した上での学校防災計画や防災訓練の必要性、防災教育を通して地域環境を理解すること、そして「脅しの防災教育」からの脱却も指摘しています。この「提言」は教職員に向けたものですが、当然、行政や地域との協働が欠かせないことから、教育総研ではこの「提言」を教育委員会にも送付することとしています。

   2016環境部会提言 (PDF)

  

 

2016年度 フィールドワーク・公開研究講座

「正常性のバイアス」を克服しよう

 

8月17日、環境教育部会が主催する公開研究講座が開催されました。今回のテーマは金沢を取り上げ、「私たちはこんな処に住んでいる」とのテーマで、部会長・青木賢人さんに講演をお願いしました。 午前中は「ブラアオキ~金沢編~」として、香林坊→金沢城→浅野川とフィールドワークを22名の参加で行いました。なぜ金沢城がここに?犀川と浅野川に挟まれた段丘の端にあり、周囲が沖積地、石垣の素材(戸室石)も比較的近くに存在した、など、町づくりに絶好の立地条件だと説明されました。浅野川沿いを歩き、武蔵から南町界隈、金沢城方面から、どの小路も緩やかな下り坂、これが津幡から鶴来につながる全長26kmの「森本・富樫断層」の現場ということです。活断層が確認されていても、具体的な対応策はまだまだ不十分。歩いてみて初めて分かることが多く、猛暑の中、2時間余、有意義な体験となりました。

公開講座は参加者59名、金沢を形作る大地の構造がどうなっているか、まず写真で俯瞰。そこから活断層の存在を確認しました。森本・富樫断層の活動周期は約2000年に1度、最新の活動は1700~2200年と推測されており、地震はいつ起こってもおかしくないし、発生確率も高い。断層付近は震度6強が予想され、その周辺に学校などの施設も少なくない。会場からは学校現場では防災担当は作られているものの、管理職・行政も切実感が薄いとの意見も出されました。青木さんは、浅野川水害も映像で紹介しながら、「洪水」「地震」「噴火」(戸室山の石材を形成)「崩壊」(戸室山の山体崩壊)がなければ、金沢の町はなかった。金沢で暮らすためには、これらと付き合う心構えが必要だ。「悪いことは起きないと思ってしまう=正常性のバイアス」を克服しよう。とまとめられました。

 

 2015年度「ローカルからグローバルへ」環境学習への提言    

 2015年度「環境教育」部会では、部会長の青木賢人(金沢大学)さんを中心に「提言」を取りまとめました。この提言では、「とかく環境学習というと、ともすれば『地球温暖化問題』『生物多様性の減少』『オゾンホール問題』など、グローバルスケールの問題に行きがち。しかし、子どもたちの空間的知覚は、一足飛びに世界的で抽象的な認識には行きつかない。グローバルスケールの問題を理解するには、ローカルな分かりやすい現実からスタートする必要がある。例えば東北の地震を知っていても、金沢の断層の存在を知らない」として、まず身近な環境を五感で感じ取る、そしてすべての教科で実践が可能と指摘されています。教育総研では、この提言をこのHPで紹介することで、「環境教育」のハードルを低くして実践にとり組んでいただくことを期待するものです。
写真は青木賢人部会長、2015年8月に実施した白山市鶴来でのフィールドワーク。  
   2015環境学習への提言(PDF)

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 今一度、放射線教育を  

2015年3月11日で東日本大震災の発生から4年目となりました。そして今なお東京電力福島第1原発事故で12万人が避難生活を強いられている福島の現実があります。国は昨年より順次避難指示区域の解放射線副読本のりようにあたり・表紙除を始めていますが、対象住民の帰還は十分に進んでいない現状にあります。線量の高い地点を残したままの除染への不安、加えて第1原発の廃炉や汚染水対策が一向に収束の目処が立たないことも加え、放射線被曝への懸念が払拭されていないと聞きます。

今年度当初に文科省は小学生用と中・高校生用として「放射線副読本」配布しました。いしかわ教育総研「環境教育部会」では、原発事故直後(2011年)に発行された副読本に比べて、事故の記載や放射線リスクに触れるなど、一定の改善が見られていることから、資料として利用できると判断しました。そして「安全神話」に基づく表現や、放射線リスクを過小評価した表現などを逐条的に批判・分析し、見解を付け加えながら、学校現場で、様々な機会を通じて実践に活用できるよう、取りまとめを行いました。あの事故の教訓を風化させないためにも、今一度、放射線教育を。
   
 放射線副読本の利用にあたり(PDF版)

 

 

 

 

 「環境教育」公開研究講座  
■ 日時   2014年8月21日 
■ 場所   ラピア鹿島ミューズホール
■ 講演テーマ「福島の今と学校現場」
■ 講師   日野 彰さん(福島県教組原発災害担当 特別執行委員)

148 kankyou9日野さんは原発事故当時20km圏内の楢葉中学校に勤務、その後避難生活を余儀なくされ、2012年から福島県教組の専従執行委員を担当しています。教育現場はどうなっているのか、双葉地方では、学校が一部再開されているものの、事故前と比較して、小学校で9.4%、中学校で11.7%しか、子どもは在籍しておらず、むしろ昨年より今年は減少しているとのこと。報道で「再開=元通り」という印象を与えていることは問題だ。校舎は廃校となった学校やプレハブ、工場施設。特別教室や体育館もない学校がある。避難先からの通学で1時間以上かかることも珍しくない。この震災と原発事故による避難生活で、自分の将来に夢を描けない子どもたちが増えており、一番の被害者は子どもたちだと指摘されました。教職員も同じ被災者だが、社会全体で事故がなかったかのように次々と繰り出される行政からの要請に応えるべく、日々奮闘しているが、精神疾患などの病休者の増加を懸念しているとのことでした。

古川雅詩さんの講演要旨と画像[PDF]
日野さんの講演要旨と画像[PDF]
参加者の 感想  [PDF]

           

 

 

  現場教職員の皆さんへ  

環境教育の役割
「環境教育」部会長 谷内昭慶

13谷内今、環境教育は学習指導要領の改正などに伴い、ますます学校での教育に割く時間が取りにくい状況にある。そんな状況下でも、学校現場では環境教育的視点を忘れてはいけない。環境教育には、物事を理解するため、分析するために、まず観察することから始まる。よく見る、よく聞く、よく感じる(触る)ことである。それがあって準備も含め、物事に対峙するという姿勢を学ぶことである。そこから見えるものは、「関係性」(つながり)である。世の中がどうつながっているのだろうか、という素朴な疑問を解き明かしてくれるものに近づくことができる。
環境学という学問はあっても、まだ発展途上なので手法については統一されていない。小中高では、理科、社会、家庭科、算数(数学)、歴史など、総合的な学習で扱うしかないようだ。一方、学校を管理する側は客観的「評価」が必要だとし、教育現場にPDCAを持ち込み、資料作成を強要してくるということで、現場はそれを多忙化のひとつとみているようである。
  13環境教育の役割(PDF)  

 

□「環境」をテーマとした写真アルバム(部会検討中・試作)

このコーナーは総研研究員や組合員の皆さんにより、「環境」をテーマにした投稿写真を掲載します。
「環境教育」にお使えるものがありましたら、活用下さい。

1.「太陽光発電」投稿・古河尚訓(教育総研統括事務局長)
自宅近くの(白山市宮永町)に大きな太陽光発電所ができました。設置者は永田清嗣さん、192枚のドイツ製パネルを配置した3棟が並びます。140kwの発電能力があり、永田さんによれば、20年で投資額の2倍の収益が見込めるとのこと。設置業者の計算では、年間278トンのCOが削減できる計算になるそうです。国が「固定価格買い取り制度」を昨年7月より始めたことで、各地でこのような取り組みが始まっています。

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2.「白山ろくの巨樹・巨木」 投稿・古河尚訓
白山ろくには巨樹が多くあります。有名なものは国道157号沿い、吉野谷地区の「御仏供杉(おぼけすぎ)」で、国指定天然記念物に指定されています。そして、白峰地区、同じく国道157号線、大道谷・堂の森神社から徒歩1時間30分、「大田の大トチノキ」(写真左、05年撮影)があります。樹齢役1300年、幹周り13m、トチノキでは日本一です。さらに、市ノ瀬地区から徒歩で2時間30分、道がないのでほとんど知られていませんが、「コモチカツラ」(写真中、07年撮影)があります。地元でもごく限られた人しか現地にたどり着いていません。幹周り19.3m、樹齢は分かりませんが17.5mの樹高があります。日本一ではありませんが、白山を背景にした姿は迫力満点(写真右)です。白山市は「水の旅」をテーマに日本ジオパークに認定されています。こうした「山の巨人たち」も白山の水の恩恵を受けています。

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3.エネルギー「地産地消」の村、フェルトハイム 投稿・古河尚訓
ベルリンから南西60km、ブランデンブルグ州フェルトハイム。人口150人程度の小さな村ですが、世界各地からの視察が絶えず、あの山本太郎さんも訪れています。村郊外に40基あまりの風力発電の風車に用地提供、隣接地の他社が運営する風車も一望でき、壮大な風車地帯となっています。このフェルトハイムが注目されているのは、発電した電力を運営する企業を通じて売電するだけでなく、自前の送電網で安価に各世帯に供給していることです。加えて家畜のし尿、木材チップのバイオマスを使う給湯施設を持ち、無風の時でもこのバイオマス施設で発電するなど、脱原発先進国ドイツでもさらに先を行く、エネルギー「地産地消」の村です。

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4.次世代の交通システムLRT、富山でまちづくりに貢献  投稿・古河尚訓
ライト・レール・トランジット(Light Rail Transit)の略、新型路面電車を基幹としたトータルな交通システム。車両はLRV(Light Rail Vehicle)といい、低騒音、高速、低床で完全バリアフリー、2~3両編成の中量輸送機関(100~150人)。富山県では2001年に高岡の万葉線(写真:順に掲載)、2006年に富山港線(富山ライトレール車両愛称:ポートラム)、2009年に市内環状線(富山地鉄・セントラム)がLRT化され、新幹線開業に伴う富山駅高架化に併せて、両者が接続される予定です。将来の脱車社会と環境負荷の軽減を目指し、富山市は鉄路を活用したまちづくり(コンパクトシティ)を進めており、特にライトレールは乗車率の大幅アップに加え、沿線活性化の成功例として視察が絶えないとのことです。石川県でも石川線や浅野川線の市内中心部への延伸とLRT化や市内環状線の設置、等LRTを生かしたまちづくりの提案が市民組織で展開されています。
金沢・LRTと暮らしを考える会   http://yadpwp.com/teian05-2/

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2013年度 公開研究講座「環境教育交流集会」

8.21「福島県でのくらしと原発事故、避難した今の気持ち」
       講師  浅田正文・浅田眞理子さん

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環境教育部会主催の公開研究講座が21日に開催されました。講師は浅田正文、眞理子さんご夫妻。お二人は東京から福島・都路村(現田村市・福島第1原発から西25km)へIターンし、自然農による、ほぼ自給自足の生活という、第2の人生を始めていました。それがあの原発事故、知人の好意で金沢の地へ避難を余儀なくされました。(活動報告参照) 参加者は一般参加者、総研研究員、教職員の皆さん約50名。様々な感想が寄せられました。

講演録ダイジェスト[PDFファイル]

参加者感想一覧[PDFファイル]

 

第5研究「環境教育」部会の研究活動の報告

2012年度研究活動の考察【PDF:650KB】
~「環境教育」を再認識する~

1112谷内さん

「環境教育」部会長 谷内昭慶

 部会長になって2年目の谷内昭慶です。教員でもなく組合員でもない私が部会長に就くには違和感があるのかもしれませんが、私は“教育と環境が国家の骨格をつくる”という考えです。これまで環境問題と向き合って多くのことを学ばせてもらいました。環境問題を学ぶということは、社会における様々な「つながり」を知り、生きること、暮らし方を考えるようになります。とてもいい機会であり教材です。
僭越ながら、教職員の皆様には自信をもって子どもたちと接していただきたいし、難題に対しては謙虚に対応していただきたい。「観察して考える」、それが環境教育の原点だと考えているからです。
よく子どもは、「どうして?」と聞いてきます。その好奇心が子どものやる気スイッチです。まず真剣に受け止め、それをやさしく押してあげて欲しいですね。
活動履歴
金沢・LRTと暮らしを考える会/代表(03年~)http://kanazwalrt.konjiki.jp/
アイ・ラブ・チャリんこ!推進委員会/代表(04年~)http://ilb.konjiki.jp/53ダイエットネットワーク/紙ごみ減量部会マネージャ(05~12年)北陸連携並行在来線等活用市民会議/事務局(07~09年)http://hokuriku.renkei.iinaa.net/全国鉄道利用者会議(鉄道サポーターズネットワーク)/賛助会員(08年~)  http://railway-s.net/

いしかわ教育総研 第11回公開研究講座【PDF:714KB】
「環境教育講演」・学習会

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