教職員多忙化は「自己規制」も要因なのか

 8月20~21日、日教組のシンクタンク教育文化総合研究所が、一般財団法人となって2回目の全国交流集会が東京で開催され、石川からは事務局から古河、塚本が参加しました。冒頭の挨拶で池田賢市所長(中央大学)は、『2006年の教育基本法「改正」から10年が経過し、日本の社会がどう変化したのかを問いたい。中でも来年度から実施される「特別の教科・道徳」について考えたい。検定教科書が作られ、子どもたちの道徳性が評価されることになる。しかし、きっかけとされたいじめ等の「青少年問題」は道徳性の問題だったのか。どう証明されたのか。問い直さねばならない。』と指摘されました。

  

 第1日目は、所長挨拶に沿って2本の講演『教育基本法「改正」から10年の社会の動き』(市野川容孝さん・東京大)、『道徳の内容(徳目)の変遷』大森直樹さん・東京学芸大)を受け、小学校道徳教科書教材を読む、というグループ討議を行いました。素材は今回のどの小学校道徳教科書にも掲載されている「人気教材」4点(かぼちゃのつる、ブラッドレー/お母さんのせい求書、手品師、星野君の二塁打)、この教材の意図を読み解くという論議で大いに盛り上がりました。しかし、こうした教材で評価を強いられる現場の実践の困難さを指摘する声も出されていました。

 今回の交流集会に併せて、2つの研究部会から報告書が提出されています。1つは「教職員の自己規制と多忙化研究委員会」、2つ目は「貧困と子ども・学力研究委員会」、2日目に設定された関連分科会の内、前者に古河、後者に塚本(別途報告)が参加しました。前者分会会議論を紹介すると、この間、教員の過剰な働き方が再三報道されるようになり、社会的な認知度も高まっています。報告書によれば、この課題に、「労働時間規制がしっかりできない給特法体制や不十分な教職員配置政策、公教育のサービス化といったマクロ要因が無視できない。加えて、勤務時間管理ができない管理職や業務削減・改善ができていない学校運営など学校組織レベルの問題がある。」と指摘しています。しかし、一方では「教員が自ら働き過ぎを招き入れ、受容している側面=自己規制の側面、がある」としています。いわゆる「子どものため」にという教職特有の価値観が、職務意識を鼓舞し、教員の「やりがい」を搾取しながら成立する構造を不問にしていないか、と問いかけています。

 グループ討議に入り、タイムカードなどの導入で時間管理ができているのは全国でまだ10%程度という中、教職労働が「子どものため」という自己規制で成り立つ側面は否定できないものの、教育行政側がその意識につけ込む形で条件整備を怠ってきたことも無視できない。教職員は自らの業務を「子どものため」として決して無条件に受け入れてはいない、無意味な業務に意義を感じていない、との意見も出されました。「自己規制」が「自己責任」論にならないようさらなる実態把握と法整備を求めていく必要を感じました。

  

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