「学力観」の固定化に警鐘

    11月19日、能美市・辰口福祉会館を会場に「公正な教科書採択を求める市民集会」が91名の参加で開催されました。この集会は日教組の教育キャンペーンの一環として、石川県では「子どもと教育を考える・いしかわ市民の会」が主催、県内教育関係者と市民に参加を呼びかける集会としています。2006年の第1次安倍政権が強行した教育基本法の改悪を契機に、この集会を継続してきましたが、特に、昨年からは2015年に県内3市で不透明な形で採択がなされた育鵬社の中学校社会科教科書を再び採択させないための広範な運動拡大を目指しています。今回講師としてお願いした善元幸夫さん(東京学芸大)は小学校勤務の傍ら、様々な総合学習の授業を作り続け、退職後は東アジア地域での教育交流を続けています。

 善元さんは、冒頭、指導要領改訂にふれ、とにかく膨大な量になっており、週5日は成り立たず、土曜授業の復活や夏休みの短縮まで文科省は言い出し、これでは学校現場は対応できなくなる。「資質・能力」が全面に出され、教育の目標だけでなく、指導の方法まで指示している。これまで、私達は「教科書で教える」と言ってきたが、これからは「教科書を教える」多様性を認めない姿勢だと指摘されました。本来「学力」についても多様なとらえ方があるはずで、2007年に学教法でこの「学力」を規定したことが問題であり、今日の全国テストは「学力向上」を強いており、明らかに公教育を壊している、とも指摘されました。

   
 パネルディスカッションではコーディネーターに呼びかけ人の川本樹さん。パネラーとして現職社会科教員の島田一郎さん(金沢市)、中澤毅さん(小松市)にお願いしました。現場で使われ始めた育鵬社教科書の教材から、島田さんは歴史教科書に触れて、世界史の記述が薄く、日本の歴史に特化され、日本人はすばらしいという記述が目立ち、国を動かした人物を多く取り上げ、民衆の力にはほとんど触れていないと紹介。中澤さんは公民教科書について、教科書を見ると、とても違和感を感ずるとして、例えば家族の役割では、「あるべき家族像」が失われているという主張や個人主義が家族の一体感を失わせている、などの記述があると紹介。憲法の記述でも、GHQが受入をきびしく迫ったと言う記述や、「立憲主義」でもだれが守るべきなのかとの記述が薄められているとの指摘がありました。

 会場との質疑の中では、若い世代のとらえ方や職場の中での共通認識の難しさについても話題が広がりました。善元さんはまとめの中で、韓国では朴政権のもとで国定教科書を創られたが、これを民主主義の力で廃棄させた。最悪の指導要領改訂を前に、目の前の子供たちに何を伝えるか、それぞれが自主編成の大切さを問いなおそうと訴えました。
 集会は、育鵬社教科書が採択された加賀・小松・金沢の市民団体から、決意表明を受けて終了しました。この集会、来年度は金沢市で開催を予定しています。

    

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